卒業生 長谷川真実さん

(拙著『翻訳家になろう!』青弓社より抜粋)

[いつでも翻訳に入れる構え]

(略)
その後、アイディ翻訳塾に入り、実践で翻訳を勉強した。ミュージカルが好きなことから、出来たばかりのシアターテレビジョンの番組の翻訳は自らをコーディネータに売り込み、どんなきつい条件でもやらせてもらった。校閲はプロのベテランがする。そのアドヴァイスに真摯に耳を傾け、気に入ってもらえるようなった。ベテラン・プロが直で制作会社から受ける字幕の翻訳の下訳を随分とこなした。バラエティでもニュースでも三流映画でもない、NHK、民放のゴールデンアワーを飾る一級作品の下訳なのだから、勉強にならないわけがない。字幕も舞台も字数の制限の有無は別にしても台詞であることにはかわりない。
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それでも何とか立ち直り、戯曲の下訳やレジュメ、海外ショービジネス・レポート、などを淡々とこなした。何と言っても一度上演実績を示したのは強い。いわば名刺をもっているようなものだからだ。次にアイディの縁で、東宝制作、2008年日生劇場初演、2011年シアター・クリエ再演での演劇公演『ウェディング・シンガー』の補助的な翻訳に携わる。そしてさらに2008年、シアター・クリエ初演、2010年、帝国劇場再演の大作ミュージカル『レベッカ』(亡き妻レベッカの幻影にとらわれる伯爵と、その再婚相手である米国出身の若い女性の愛の物語) 。この作品のセリフも長谷川がやらせてもらえることとなった(上演台本全般は、その道の権威、竜真知子の担当領域)。
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これで、長谷川の名前がクレジットされる舞台翻訳作品は3本となった。それも、名の知られた堂々たる劇場での上演である。もっと自分を売り込めばいいのにと、歯がゆく思うが、自己主張するのが苦手な人なのである。いまは次のお呼びがかかるのを待ちながら、日常は派遣でデータ入力を仕事としながら、劇場系の制作会社からの依頼があるたび、上演候補戯曲のラフ訳を1本いくら(買い切り)で受けている。劇場にいる知り合いから紹介されたものである。収入と安定を考えれば「派遣の女」であることはよろしくない。だが正社員になるつもりはない。下訳にせよ上訳にせよ、いつくるかわからないので、いざ舞台翻訳の仕事が入った場合、絶対に断りたくないと思っているからである。


卒業生の実績
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