2015年1月号

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ちょっとにやけたイケメンの英語使いの横に「会話力より対話力」とある。いいキャッチだ。今までと違う「英語学校」が出来たのかと思った。だが「カフェの朝食で外側カリカリで中はとろっとした目玉焼きを注文し、隣のニューヨークカーに大リーグで活躍する日本人選手の奥さんの美しさを講釈する」(要旨)のが対話力というのだろうか。ましてや、「炬燵でミカン、の素晴らしさを説明する」のに別に対話力などいらないのではないか。 英語で言えばこれらの場面はHe is good at speaking English.というにふさわしい(彼は英語が上手い)。

ほんとうの対話力を言うのであればHe is good at English conversation. これ「英会話が上手い」の意味ではなく「英語での話術・駆け引きが上手い」。 企業といえども志はあるはずだ。原点に戻って「対話力」を引き出すメソッドを打ち立てて欲しい。

さて今回は「掛かり方」について。
原則:M+N1+N2で
・MはN1、N2両方に掛けてみる
・それでおかしければ直近のN1に掛ける
英語は均衡を重んじる言語だからである。

例文:

@上位概念と下位概念

Usually he had his waistcoat pockets full of little nicknacks, rings, cigarette lighters, watches, and such.

×:彼はいつもチョッキのポケットに、小さな装身具や指輪、ライター、時計などを詰め込んでいる。
〇:彼はいつもチョッキのポケットに、指輪、ライター、時計といった小物類を詰め込んでいる。

(解説)

『英文正読マニュアル』(研究社、村上陽介)からいただいた(訳は私が付けた)。恥ずかしながら一読したとき、×のように理解した。なるほどと思い、気をつけて見ていると、翻訳書でも上位概念と下位概念を一緒にしているのがよくある。自戒すべきところだ。 full of little nicknacks(小物類)は以下のrings, cigarette lighters, watchesの上位概念。

Aカンマの意味

It was never my instinct to look for help, to seek favour for advancement; …
△人に助けを求める、すなわち出世のためにひいきしてもらうのは、私の性に合いませんでした。
〇人に助けを求めたり、出世のためにひいきしてもらうのは、私の性に合いませんでした。

(解説)

[「A, B」の場合、カンマは言い換えになる]と断定する英語指南書もあるが、そうではない。この場合のカンマは(1)言い換え (2)並列、の二つの可能性がある。どちらを取るかは文脈次第。従って、解釈によってどちらとも取れることがある。
ここは(1)でも間違いではないが、(2)と取った方がよいと思う。援助を求めるのと、目をかけてもらうのは、別のことと考えるからである。

B事実に立脚

For his formal language Theodore Gericault has looked to an earlier heroic age―the High Renaissance―to Michelangelo’s Deluge and his Atheletes in the Sistine.
×ミケランジェロの『洪水』やシスティーナ礼拝堂の天井画に描かれた競技者風の群像
〇システィーナ礼拝堂の天井画に描かれたミケランジェロの『洪水』と競技者群像

(解説)

これも『英文正読マニュアル』からいただいた。掛かり方はどちらともとれるが、事実を調べ後者ととる。

Cセミコロンは何を区切るか

The important thing is that the feeling of the poet should be imparted to the reader; by his verbal creation the poet should re-create in the reader a sharing of joy with his joy, hope with his hope, sorrow with his sorrow.
〇重要なことは詩人の感情が読者と分かち合えることである。言葉による創造によって、詩人は自らの喜び、希望、悲しみを共にする状態を読者の心に再創造しなければならない。
〇重要なのは、詩人の感情が読者に分かち合われ、言葉の創造によって詩人が自らの喜び、希望、悲しみを共にする状態を読者の心に再創造することである。

(解説)

セミコロンは(1)比較 (2)対照 (3)敷衍 (4)大きなAND、の四つの意味がある。
ここは(3)ととれば上の訳になる。(4)ととれば下の訳になる(その場合that以下の二つの節が並列することになる)。流れとバランスから(1)のほうがよいように私は思う。

D不定詞はどこに掛かるか

Take a man by himself, and there is generally some reason to be found in him, some disposition for good.
×人間一人を取り上げて見れば、一般的にその人の中に見出される何がしかの理性、何がしかの善に対する性向が存在する。
〇人間一人を取り上げて見れば、その人の中には何がしかの理性、何がしかの善に対する性向が見られるのが普通だ。

(解説)

to be found in himは、前後のsome reasonとsome disposition二つに掛かる。この位置に来ているのは、文末に置くとカンマ以下の後半部が重くなってバランスが悪いため。

Ewith sincerityはどこに掛かるか

In the political life of democracies we see men enthusiastically supported and really admired with sincerity so long as they remain in opposition, …
〇民主国家の政治の世界では、政治家が野にある限り、心より熱狂的に支持され真に賞賛されるのを目にする。
〇民主国家の政治の世界では、政治家が野に在る限り、熱狂的に支持され、心より真に賞賛されるのを目にする。
(解説)with sincerityは(1)supportedとadmired
(2)admiredのみ、のどちらにも掛かりうる。ここ似たような言葉を重ねる同義語反復、どちらをとってもさして変わらない。あとはどちらが読みやすいかという訳者判断の問題。

Fbrought onはどこに掛かるか

Most of us think a good deal about faces: about our own with vanity, resignation, anxiety and the unease brought on by self-consciousness, …
×多くの人は顔についてよく考える。自意識によってもたらされる自惚れ、諦め、心配、不安でもって自分の顔を考える。
〇多くの人は顔についてよく考える。自分の顔を、自惚れ・諦め・心配・自意識による不安でもって。

(解説)

brought on by self-consciousnessはtheのところでブロックされ、それより前の一連の名詞には掛からない。

Gin oppressed countriesはどこに掛かるか

I am not thinking only of revolutionaries, socialists, nationalists in oppressed countries, and such.
×私は抑圧された諸国における革命家、社会主義者、民族主義者などのことだけを考えているのではない。
〇私は革命家、社会主義者、抑圧された諸国における民族主義者などのことだけを考えているのではない。

(解説)

1, 2, 3 M, and 4の並列。このMが1, 2, 3の三つに掛かることはない。1, 2,3,4は対等の関係で並列しているからだ。Mを全部に掛けたいなら1, 2, 3 Mとするか、1, 2, 3, and 4Mとしなければならない。

H複雑な掛かり方を分解してください

But I have thought that in an age in which education, and its improvement, are the subject of more, if not of profounder study than at any former period of English history, it may be useful that there should be some record of an education which was unusual and remarkable, and which, whatever else it may have done, has proved how much more than is commonly supposed may be taught, and well taught, in those early years which, in the common modes of what is called instruction, are little better than wasted.

教育の目的を論じた、ジョン・ステュアート・ミルの文章。複文・重文・挿入などで掛かり方がわかりにくくなっている。頭の体操と思って、チャレンジしてみてください。 来年度3月からの土曜公開セミナーで取り上げます。 本年もご愛読のほどを。

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