2013年12月号「接続詞」

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0 前説

三つ子の魂百までというが、どんな英語使いでも中学生のとき紋切型に覚えた基本単語でつまずくことがある。believe=信ずる(それほど重くない「…と思う」の訳語が適していることが多い)、cry=叫ぶ(絶叫でなく「声を上げて泣く」の場合のほうが多い)、truth=真実(不可算名詞で総称的に使われる場合はよいが、the truthでは「事実」とした方がよい場合が多い)などいくらでも挙げられる。
forもそのひとつで「というのは…だからだ」と訳しては意味が通じないことが多いが、英文学の碩学、翻訳の大家も前後を考えずに、機械的にそう置き換えてしまうことが多い。「〜が多い」としつこく同じ言葉を繰り返し、しかも歯切れが悪く申し訳ないが、「…であるのだ」とスパッと分けられないのが、言葉の妙というもの。我慢して読んでいただきたい。

1 理由をあらわす接続詞


あえてスパッと分けてみる。
because:従位、未知の理由
since:従位、既知の理由、自明の理由
as:従位、既知の理由、自明の理由、意味が弱い
for:等位、判断の根拠を述べる、文語的・個人的・感覚的
*従位とは前後の節の偉さが違う事、等位とは前後の節の偉さが同じこと。

文例を示す。
① He got tired because he worked hard.
② Since she is ill, I can’t take her with me.
③ As he worked hard, he got tired.
④ He got tired, for he worked hard.

① 「熱心に働いたので、疲れた」因果関係が明瞭。
 しつこく訳せば「皆さんご存知ないでしょうから教えてあげますが、彼が疲れたのはね、熱心に働いたからなんですよ」
② 「彼女が病気だったので、連れて行けなかった」自明の理由を述べる。
 しつこく訳せば「ご承知のように彼女は病気でしたからね、それで連れてゆけなかったんですよ」
③ 「熱心に働いたので、疲れた」前後をゆるく因果で結ぶ。
 しつこく訳せば「熱心に働いて、彼は疲れた」(いや、ちっともしつこくないが、かようにさらっとつなげるのがasの役割)
④ 「熱心に働いたので、彼は疲れた」主張の根拠を述べる。
 どう①と違うのと思う人もいるだろう。そこでしつこく訳すと「彼は疲れたんですよ、だって何しろ熱心に働きましたからね」①が原因・結果と切っても切れない直接的な関係を示しているのに対し、④ は「何でそんなことを言うかというと」といった、因果の薄い間接的というか補足的な理由を述べる。

And yet at this moment, a moment that will define a generation, it is precisely this spirit that must inhabit us all. For as much as government can do, and must do, it is ultimately the faith and determination of the American people upon which this nation relies.

まさに今この時、ひとつの時代を決定づけようというこの瞬間、私たち全員が抱いておかねばならないものが、まさにこの奉仕の精神なのです。というのは、政府は多くのことができるし、できる限りのことをしなくてはならないわけですが、この国が頼りにしているのは、結局のところアメリカ国民の信念と決意だからです。(「オバマに学べ英文法」アルク刊の訳文)

「奉仕の精神を持たねばならない」理由が「アメリカは国民の信念と決意に頼ってる」からとはなるまい。
これも「何でそんなことを言うかというと、国民の覚悟一つで国の未来が決まって来るからだ」と読まねばならない箇所だ。「奉仕の精神」は「信念と決意」のひとつの現れなのだ。

faithは「ある物事を全面的に信じること」determinationは「その信じたことを決然とやり抜こうとする意志」(広くは同義語反復)
governmentは細かく言えば、不可算名詞なので「政治」(政府ならthe government)だが、まあ同じようなものでこれでよいだろう。

2 orの微妙な違い


not A but Bは「AでなくB」と機械的にしてしまうが、ニュアンスがずれることがある。

文例を示す。
① It is not red, but black.
② I did not go, but stayed at home.
③ This is not green but blue.

① 「赤でなくて黒」赤は否定され、黒は肯定される。
② 「行かないで家にいた」否定はされるが、次の肯定を強めるための前座のような役割。焦点は「家にいた」にある。
③ 「緑というより青」緑は否定されず、「詳しくいうと青」だということ。
欧米では緑が青の上位概念。例:J’aime vos longs yeux verdatres.(長き君が眼の緑の光のなつかしし)
「緑」(vert)とはいっているが日本の感覚では「青(い眼)」のこと。日本では青が緑の上位概念。例:青信号。青りんご

3 接続詞か関係代名詞か


「両性具有」とでもいうべき、一つの単語が二つの品詞の要素を持つことがある。

文例を示す。
We have, however, more and better materials, sometimes, than we are aware of: …
「しかしながら、我々は質的にも量的にも自分たちで気づいている以上の材料を持つことがよくある」
thanはwe are aware ofがmaterialsに掛かると読めば関係代名詞(自分で気づいている以上の材料)。we are aware ofのあとthe materialsが省略されていると読めば前後をつなぐ接続詞。それにしてもmaterialsは「気づいている材料」「それ(気づいている材料)以上の材料」と身を二つに裂かれていることにご注意。

4 asの否定の範囲


どこまでが否定の範囲なのか。誰もが恐る恐る、後ろめたくいわゆる「文脈依拠」で解釈していることだろう。それに少し、文法的な面からの調味料を。

文例を示す。
① As I thought, geese do not fly.
② Geese do not, as I thought, fly.
③ Geese do not fly, as I thought.
④ Geese do not fly, as you claim.
⑤ The dog does not run as he did two years ago.

①「思っていたとおり、ガチョウは飛ばない」
②「思っていたのと違って、ガチョウは飛ばない」
③ 上記①、② の二つの解釈が可能
④ 「飛ぶなどと君はいうが、ガチョウは飛ばない」
 上記③ に似ているが、強い主張のことば(claim)があるので、反義になる。
⑤ 「その犬は二年前のようには走らない」
 二年前と同じく走らない、といいたいのならas以下にnotが必要。

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