2013年5月号「関係詞」

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0 前説

戦前は中等教育の英語も充実していた。それを担ったのは主に高等師範学校(東京、広島)英語科の卒業生たち。帝大英文科が文学に勤しむのを尻目に、高師英語科は、一語一語にこだわる「いわば訓詁」(OBの英文学者福田陸太郎の言)に専念した。それで渡部昇一が言うように「自分が通った旧制中学には東大や東北大英文科を出た先生方もおられたが、東京高師出身の先生の方が断然できた」ということになる。
高師は今でいえば短大のようなものだが、大学より英語の実力があるというのは、気合の違いであろう。帝大を出れば他に就職口もありえようが、高師卒業生は、末は校長を目指し、生徒(旧制中学、今の高校相当)の学力増進に励むしか道がなかったのだ。だからこそ徹底した文法をやった。生徒を納得させ、上級学校(旧制高校、大学予科)への進学率を高めることにつながるからだ。
クジラの公式として有名なno more A than B(AでないのはBでないのと同じ)なども、英語の発想を日本語で理解する便法としてこの学校から広まったと思われる。東京高師出身の故・駿台予備校英語主任鈴木長十が発明したとの説もあるが、時代的に合わない。むしろ鈴木は高師で習った公式を予備校で流布させたのではないか。 だが公式にあてはまらない、じっくり論理的に点検しなければならないものもある。今回はその一つ、いくつかの顔(二重名詞、二重品詞とでもいうべき両面具有)をもつ単語の読み解き方を学ぶ。

1 as:接続詞か副詞か関係代名詞か


(1)文例
① I saw him as he was coming out of the house. (接続詞)
 彼が出てきた時
② He swims fast, but I can swim just as fast. (副詞)
 「同じくらい」と訳すが、意味は「その分だけ」。どの分かと問われれば、省略されているas he swimsと同じ分。
Such men as are rich (関係代名詞)
 the men who are richと同じ。such 〜 as − は、結びつきの強い連関詞
④ This is the same watch as I have lost. (関係代名詞)
 これも連関詞。asは目的格の関係代名詞。cf. I have lost the watch.
⑤ He was late, as is often the case with him. (関係代名詞)
 asは主格の関係代名詞。先行詞は前節(He was late)全体

(2)見分け方
 ・as以下が独立文になるか
 ・asは何に掛かるか
 ・連関詞になっているか
 ・先行詞があるか

2 that:接続詞か関係代名詞か関係副詞か


(1)文例
① I know (that) you are my friend. (接続詞)
 IがS、knowがV、that以下がO。目的語になる節をまとめ「…ということ」と訳せる
② It was Tom that I met yesterday. (関係代名詞)
 強調構文。強調されるのはthatの前、ここではTom。I met Tom yesterday.といえる。thatは目的格の関係代名詞。
 cf. It was yesterday that I met Tom.
 これも強調構文。yesterdayが強調される。The day in which I met Tom was yesterday.
 の略形と読める(it = the day、that = in which)其の場合、thatは関係副詞。
③ It is that I have my own business to attend to. (接続詞)
 The fact is that …の略形(it=the fact)。thatは補語となる節をまとめ「…ということ」と訳せる。
④ He’s the man that lives next door to us. (関係代名詞)
 The man lives next door to us.と読める。主格の関係代名詞
⑤ That was the day (that) she left (on). (関係詞)
 onがあれば関係代名詞、onがなければ関係副詞。She left on the day.と読む

(2)見分け方
 ・that以下が独立文になるか
 ・it, was, thatを消して文が成立するか
 ・「…ということ」と訳せるか
 ・in which等の代用と読めるか
 ・先行詞があるか

3 than:接続詞か関係代名詞か


(1)文例
① She looks lovelier than ever. (接続詞)
 everに文が凝縮されている。(than) she has looked lovely.
② We have more apples than we could eat [than could be eaten]in a day. (接続詞とも関係代名詞とも)
 これ重要。実はappleはthanの前後で別のもの、それが一語に収まっている(二重名詞とでもいうか)。
 We have more apples. We could eat apples. (食べられる林檎、それ以上の林檎)
 後の部分をWe could eat (apples)と読めば、thanは目的格の関係代名詞。(Apples) could be eaten と読めば(appleが抜けていると考える)、接続詞。

(2)見分け方
 ・比べるものがはっきりしているか
 ・than以下を独立文に復元できるか
 ・比較される対象が前後で引き裂かれていないか

4 where:関係副詞か接続詞か


(1)文例
① This is the room where Mozart practiced the piano. (関係副詞)
 「ここはモーツァルトがピアノを練習した部屋です」
 This is the room. Mozart practiced the piano in the room.
② Home is where the heart is. (先行詞の含まれる関係副詞)
 「家庭こそ心の居場所」
 Home is the place in which the heart is.
 Home is the place. The heart is in the place.
③ Put back the book where you find it. (接続詞)
 「その本をもとあった場所に戻しておきなさい」
 Put back the book in the place in which you find it.
 Put back the book. You find it in the place.
 *in the place in which自体をイディオム的接続詞と考える

(2)見分け方
 ・in whichに置き換えられるか
 ・the place in whichに置き換えられるか
 ・in the place in whichに置き換えられるか
 *前置詞、名詞は別のものに置き換える場合もある
 *ここまでの関係代名詞を、疑似関係代名詞とする考え方もある

5 how:疑問副詞か関係副詞か


(1)文例
① How will I recognize your house? (疑問副詞)
 「どのようにしてあなたの家が分かりますか」
② This is how he smiled at me. (関係副詞)
 これは彼が私に微笑んだ事の次第です
 ⇒こういうふうに彼は私を見てにっこりしたのです

(2)見分け方
 ・「どんな」という意味が強いか
 ・the way in which「…のことの次第」と置き換えられるか

6 why:疑問副詞か関係副詞か


(1)文例
① Why are you standing? (疑問副詞)
 なぜあなたは立っているのですか
② Why Ann left was because she was unhappy. (関係副詞)
 先行詞が省略されている = the reason why ⇒ the reason for whichの略形。
 Ann left for the reason.と読める
 アンが去った理由は、不幸だったからです
③ Tell me why you did it. (関係副詞とも疑問副詞とも)
 何故あなたがそれをしたのか教えてください。
 あなたがそれをした理由を教えてください

(2)見分け方
 ・the reason why, the reason for whichで置き換えられるか

7 演習


① We have, however, more and better materials, sometimes, than we are aware of: …
 materialsがthanの前後で異なるものを指している。
 We have more and better materials. We are aware of the materials.
 われわれは材料を持っている。われわれはもっと多くの良い材料をもっている。
 ⇒われわれは自分で気づいている以上の材料を持っている
② …: the same question of course exists for modern biography, as Wilhelm Dilthey was the first to explain.
 取り方その一:asは目的格の関係代名詞。先行詞は前節全体
 Wilhelm Dilthey was the first to explain that the same question of course exist for modern biography.と読む
 ⇒ヴィルヘルム・ディルタイが最初にこの問題が現代の伝記文学にもあることを指摘した。
 取り方その二:asは接続詞、explainは目的語を内包する自動詞。
 Wilhelm Dilthey explains first about the matter.
 ⇒この問題はもちろん現代の伝記文学にも存在する。ヴィルヘルム・ディルタイが最初にこの問題を解釈したのであるが。
Where several explanations are advanced, the rule is followed that the one which is more simple is also more nearly correct.
 Where = In the place in which …
 いくつかの説明がなされる場合には、…
④ The sense of security often subsists after such a change in the conditions as might have been expected to suggest alarm.
 such A as Bの連関詞。asは関係代名詞で、先行詞はa change in the condition。
 本来であれば恐慌状態を来たしかねないほどの状況の変化があったあとでも、この安心感は存続する。
⑤ The aim of science is to foresee, and not, as has been understood, to understand.
 「科学の目的は予見することであって、一般に考えられているように、理解することではない」
 asは接続詞ととるのが良いと思う。簡略化すれば The aim of science is not to understand, as we have understood. ⇒ The aim of science is not to understand, as we have understood that the aim of science is to understand.
 *煩雑なので説明は省くが関係代名詞ともとれそう。
⑥ History must be the story of how things have come to be what they are.
 疑問副詞とも関係副詞ともとれる。
 どのように物事は今の形になったのかの物語
 物事が今の形になった事の次第の物語
⑦ On those occasions one cannot but contemplate the many things that have been done that ought not to have been done, and the many things that have not been done that ought to have been done.
 (誤訳例) そうした場合に人は、当然するべきはずであった事柄で、しなくてもよかったはずの多くの事柄を、また、しなくてもよかった事柄で、当然すべきだった多くの事柄をじっくり考えないわけにはいかない。
 いずれも主格の関係代名詞。
 二重制限は前から訳すのが原則。前のthatが大枠、あとのthatがその中の小枠となるのだから。
 「多くのこと」>「なされてしまったこと」>「すべきでなかったこと」
 ⇒やってしまったがすべきでなかった
 「多くのこと」>「なされなかったこと」>「なされるべきであったこと」
 ⇒やらなかったがやるべきであった

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