2013年4月号「曖昧文」

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0 前説

戦前の教育制度を調べている。
旧制高校の英語を第一外国語とする文甲で、英語の授業が週12時間(50分授業)。これが3年間で36時間。大学に入って専門の外書がすらすら読めるはずだ。高等師範学校の英語などは週13時間から15時間、4年間で55時間。東京外国語学校では週23時間、3年間で69時間。これだけ集中してやればこそ英語ができるようになったのだろう。
いまの高等教育で英語がものにならないと言われるのは、圧倒的に授業時間が少ないからだ。さらに「コミュニカティブ」と称して、ペラペラしゃべる英語に力点を置いて、結局「読むことも話すことも」できなくしているのではないか。外国人である我々が英語をものにする第一の要素は、文法が分かること、精確に読めることである。そのうえで書き、話し、聞くことへ移ればよい。理解を曖昧にしたままいくら英語に励んだところで対話力どころか会話力もつきはしない。ということで、今回は曖昧文をとりあげます。

1 原文自体が曖昧なもの


自分の頭が悪いと卑下するには及びません。
英語自体が曖昧なことも結構あるのです。

(1)掛かり方があいまいな場合
① John hit the man with a stick. (副詞句か形容詞句か)
 「棒をもった男」(a manに掛かる)か「棒でもって打つ」(hitに掛かる)か文脈に依拠
  cf. John saw the man with a stick. (常識で考える)
 「棒でもって見る」ことはふつう考えられないから「棒をもった男」ととる
② I don’t like fat men and women. (形容詞が修飾するもの)
 「<太った男>と<太った女>」とも「<太った男>と<女>」とも
My favorite girl’s name is Margaret. (形容詞が修飾するもの)
 「<私の好きな少女>の名前」とも「私の好きな<少女の名前>」とも
All the women built a house. (配分単数かどうか)
 「皆<で一軒>」とも「皆<がそれぞれ一軒>」とも
  cf. A house was built by all the women.
 「皆<で一軒>」としか読めない 
The chicken is ready to eat. (目的語は何か)
 「鶏は<(獲物を)食べる>準備が整っている」(eatは目的語を内包する自動詞)とも
 「鶏は食べられる準備が整っている→食べごろだ」(見かけ上の主語のthe chickenがeatの目的語、隠れた行為主は人間)とも
  cf. The steak is ready to eat. (常識で考える)
 「ステーキが(何かを)食べる」ことは考えられないから「ステーキは食べごろ」ととる
When did you arrange to meet him on Sunday night? (whenは何に掛かるか)
 「いつ<日曜の夜に会うことを>段取りしたのか」(whenはarrangeに繋がる)
 「<日曜の夜のいつ>会うよう段取りしたのか」(whenはon Sunday nightに繋がる)
⑦ The next day, Mr. Lorry met Lucie in Dover. (形容詞句か副詞句か)
 「ドーバーで(ルーシーに)会った」とも「ドーバーにいる(ルーシーに)」とも

(2)多義で判断に迷う場合
① 状況による選択
 The curry was hot and the tea was hot. (熱い、辛い)
 節の前後でhotの意味が変わってもよい。「カレーは熱い、お茶も熱い」「カレーは熱い、お茶は辛い」「カレーは辛い、お茶は熱い」「カレーは辛い、お茶も辛い」
 cf. The curry was hot and so was the tea. (soで限定される)
 「カレーは辛く、お茶も辛い」「カレーは熱く、お茶も熱い」
 so S V(Sはそうです) so V S(Sもそうです)の形では、soは前の形容詞と同じものを指さねばならない。
 Mother is cooking. (自動詞、他動詞、比喩的)
 「母は料理中」(自動詞)
 「母は料理されている」(主語が目的語)
 「母はうだっている」(自動詞、比喩的な意味)
 Mary is my sister, and so is Suzan. (日英語の誤差)
 マリーもスーザンも自分の姉妹だが、年齢の上下は不明。
③ 自動詞と他動詞
 They are flying planes. (飛ばす、飛ぶ)
 「飛んでいる飛行機」(自動詞の現在分詞)「飛行機を飛ばしている」(他動詞)
④ 過去分詞と形容詞
 The robber was unmasked. (形容詞化しているかどうか)
 「仮面をはがされた」(受動態)「素顔だった」(形容詞化)
⑤ 前置詞
 A mouse scuttled behind the curtain. (英語には助詞がない)
 「ネズミ、カーテンの後ろ、ちょこちょこ走った」が直訳。
 日本語にするときは不自然なので解釈をいれて「後ろで」「後ろを」「後ろに」などとする。
 この助詞相当の役割は英文では副詞が行う。例:A mouse scuttled through behind the curtain.(後ろを抜けて)
 The ball rolled underneath the table. (英語には助詞がない)
 「ボール、ころがった、テーブルの後ろ」
 これも同じで、訳は適宜助詞を加えるが、そのため自ずと解釈の幅が狭まる

2 読み手の理解が曖昧なもの


文法を知っていれば解決がつく

① 文修飾と語修飾
 He stopped the car suddenly. (動詞を修飾)
 「突然止めた」
 Suddenly he stopped the car. (文を修飾)
 「突然なことに」
② 多義
 …the elders with whom I was bred … (所属を示すwith)
 「私が子供だったとき、その周りにいた大人たち」
 She had been with a publishing company for two years.
 「二年間出版社で働いていた」
③ 主語
 Who is the next President?  (whoはSまたはC)
 「誰が次の大統領になるか」「次の大統領は誰になるか」
 Who can the next President be? (whoはC)
 「次の大統領は誰になるか」
 Who can be the next President? (whoはS)
 「誰が次の大統領になるか」
④ 形容詞の位置
 a sleeping baby (永遠的、分類的)
 「眠り(病の/癖の/)」
 cf. a baby sleeping (in the bed) (一時的、個別的)
 「たまたま眠っている」
⑤ 文型
 John baked a cake for Mary. (SVOM、forは目的・対象)
 「マリーのために焼いたが、マリーは受け取ったどうか分からない」
 John baked Mary a cake. (SVOO)
 「マリーは受け取った」
⑥ 自動詞と他動詞
 He climbed the mountain. (直接的)
 「山登りをした」(頂上まで登った)
 He climbed up the mountain. (climb upで他動詞化)
 「山を登っていった」(どこまでかは分からない)

3 演習


① 下から取ったのか下に入れたのか?
 He tried to get a pencil under the desk.
 このgetは「動かす、移動させる」の意味。underはその方向「鉛筆を机の下に入れようとした」
 cf. from underなら「机の下から取り出そうとした」
② to不定詞はどこに掛かるか?
 I changed my mind to go to Italy.
 曖昧。「イタリアに行く決心」とも「イタリアに行くために決心を変えた」とも
③ 忘れてるのか、思い出したのか?
 Oh, I forgot!
 「忘れてた」(今思い出した)
 cf. Oh, I forget.なら「忘れてる」(思い出せない)
④ 未来か意志か?
 I will be flying to Kumamoto at 2 p.m.
 「二時には熊本に向けて飛んでいることでしょう」「飛んでいるつもりです」
⑤ ドアとwalkの関係は?
 He walked out the door.
「ドアを抜けて」(部分、面)
 cf. He walked out of the house.「家から出て行った」(立体的なもの)
⑥ どれくらい離れているのか?
 He lived outside the London.
 sideはワキだから「ロンドンの近く」
⑦ useful to manはどこに掛かる?
 Biological science must have been begun with observation of plants and animals useful to man.
 「人間にとって有用な<動植物>」とも「<植物>と<人間にとって有益な動物>」とも
⑧ theyは現代の建築家。
 They know that they are practicing an art and therefore are concerned with the pursuit of beauty.
 読み方その I:「芸術を実践しているがゆえに美の追求にかかわっている」 
 They know [that they are (practicing an art) and (therefore are concerned with the pursuit of beauty)].
 読み方その II:「芸術を実践していることを知っている、ゆえに美の追求に関心がある」
 They [know {that they are practicing an art}] and [therefore are concerned with the pursuit of beauty].
 説得性から選ぶ
⑨ goatは誤植か?
 An acute shortage of mutton has hit the city. The shortage is due to the nonavailability of goats from India.
 muttonは「羊肉」だからgoatsはboatsの誤植だろうと早合点してはいけない。山羊の肉のことをインド東部、バングラディッシュではmutton と言うのである
⑩ 並列構造はどうなっているか?
 Usually he had his waistcoat pockets full of little nicknacks, rings, cigarette lighters, watches, and such.
 「小物類、指輪、ライター、腕時計、など」と単純に並列させてはいけない。
 little nicknacks(小物類)の下位概念として以下具体的な物が来ているのであるから、それが分かる訳文にする。「…といった小物類」

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