2009年10月号(第6回) 『There you are.など』

PDFでダウンロード
2009年10月号(第6回) 『There you are.など』
 辞書に意味が載っていない、載っているにしても見つかりにくい。そんな慣用表現があるものだが、この There you are. に類するものもその一つ。おまけに逐一の表現が、場面により異なる意味を持っていたりして、実にやっかい。簡単に整理して並べるが、変形もよくある。これはもう、基本形を丸暗記しあとは適宜…、というしかない。

Here you are.Here you go. Here it is.
(1)( 物を渡して)「はいどうぞ」
(2)「ここにいた、見つけたぞ」
(3)(念を押して)「いいかね」

There you are.There you go. There it is.
(1)「そこにあるから、どうぞ」
(2)「そこにいたね、見つけたぞ」
(3)「ほら、言った通りでしょ」

Here we are.
「さあ、ついたぞ」

There we are.
「そんなもんだ」

Here we go.
「さあ行くぞ/ 始めるぞ/ やるぞ」

Here you (we) go again.
(主によくないことで)「そらまた始まった」

There you go.
「また始まった/ 仕方ない/うまいぞ/ その通りだ/ そこにあるからどうぞ」など多義。



 小説から、実際の例文で実践を。訳語は上記のものにこだわらず、流れに合ったものを作ればよい。

(ひやかしたつもりの骨董を買わされる羽目になって、主人公がつぶやく)
‘Oh dear,’ Mr Boggis said, clasping his hands. ‘There I go again. I should never have started this in the first place.’

Oh dear は、驚き・困惑などを表し「おや、まあ」。There I go again. は、よくないことに関し「またやってしまった」「ほら、言ったとおりでしょ」。in the first place は「そもそも、まず第一に」

訳) 「おやおや」と、両手を握りしめてボギスは言った。「だからいわんこっちゃない。そもそもこんなこと始めるべきでなかったんだ」



(ワインの銘柄を見定め、鑑定家が講釈する)
When he lowered the glass, his eyes remained closed, the face concentrated, only the lips moving, sliding over each other like two pieces of wet, spongy rubber. ‘There it is again!’ he cried. ‘Tannin in the middle taste, and the quick astringent squeeze upon the tongue.

he はワイン鑑定家。

訳) グラスを下ろした彼の目はまだつぶったまま。集中した顔面で、上下の唇だけが湿った柔らかいゴムのように動き、互いをなめあっている。 「やっぱりそうだ!」と、彼は叫んだ。「二番目にタンニンの味がでてくる。舌にからまってキュッとくる収斂性のやつだ。」



(下宿の女主人に再三勧められて、主人公が居間のソファに坐るところ)
He crossed the room slowly, and sat down on the edge of the sofa. She placed his teacup on the table in front of him. ‘There we are,’ she said. ‘How nice and cozy this is, isn’t it?’

he は主人公。she は女主人。

訳) 彼はゆっくりと部屋を進み、ソファの端に腰かけた。女主人は彼の目の前のテーブルに茶碗を置いた。 「ほらね」と女主人は言った。「ここってとても寛げるでしょ」


  

前に戻る 次へ進む
コラムトップに戻る
ページトップへ