2009年6月号(第3回)『単語集の訳語』その①

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2009年6月号(第3回) 『単語集の訳語』  その
単語力がないので、遅まきながら主要語ぐらいは覚えておこうと、単語集を買ってきた。『晴山陽一の 最短! 3000英単語』(語研・刊、晴山陽一・著)
著者は大学の夏休みに1ヶ月でドイツ語10000語を完璧に覚えた、というだけあって、この単語集は社会人向け3000語の選択、訳語の選定がたくみで、訳文もとても上手だ。例えば、
consent to be transferred to the Yokohama branch(横浜支店への転勤を承諾する)---これなど普通の単語集なら紋切り型に「同意する」とやってしまうところだろうが、晴山は consent の「よく考えたうえで同意する」のニュアンスを一語でうまくまとめている。
 それでも細かく見てゆくと、直したい箇所がちらほら、そして明らかな間違いも少しだけある。この本が更によくなり、英語学習者の役に立つよう、余計なお世話だが以下気になったところを指摘してゆく。
 下線部、どこがどう悪いのか、まず考えてから、解説を読んでいただきたい。*印の数は直して欲しい程度を示す。



*0004 add an item to the meeting agenda
この項目を会議の議題に加える 

[解説]
anとあるのをわざわざ「この」とする意味はない。
一項目



*0037 hold a convention in the auditorium
大ホールにて年次総会を開催する

[解説]
確かに「定期総会」「年次総会」の意味になることもあるが、覚えることが目的の単語集では広めの意味を与えたほうが使用者に益があるだろう。
大会



*0053 have a job interview
求職面接をする

[解説]
「面接をする」では採用側が行なうみたいだ。求職側の立場からの行為なのを明確にして欲しい。
受ける



*0070 accept a posting as branch manager
支店長の役職を受け入れる

[解説]
「役職」なら
position posting は「役職を命ずること」。
任命



*0079 send a resume to Human Resources
人事部に履歴書を郵送する

[解説]
human resources は意味範囲が広く(人的資源、人材を扱う機関、企業の人事部門)訳例を覚えるには不適。
the personal department



*0114 annex two small firms
2つの零細企業を合併する

[解説]
annex は大なるものに小なるものを付加すること。「合併する」は前の助詞「を」と合いにくいし、また対等のように聞こえる。
併合する



**0236 a life expectancy of 80 years
80歳の平均寿命(期待)

[解説]
「平均寿命」は
the average life span life expectancy は、平均寿命の意味で用いられることもあるが、ふつうには、あと何年平均して生きられるかということ。
平均余命



**0264 a use of ones company pension
会社の退職金の使い道

[解説]
アメリカには退職金制度はあまりないようだが、しいて訳せば
retirement allowance ぐらいか。
企業年金



*0292 pay the surcharge for a reserved seat
特別席の追加料金を払う

[解説]
reserved (予約)したから「特別」席ということになるのか。でもわざわざ意味を狭めることはないだろう。
指定席



***0406 present an alternate plan
代替案を提出する

[解説]
alternate には下位の語義として「代りの」という意味があるが alternative のほうが一般的。
alternate alternative に替える



***0409 be apprehensive about future business possibilities
将来のビジネスの可能性について認識している

[解説]
「認識して」を「意識して」の意味で使うなら
conscious 、「気づいて」なら aware of だろう。英文は将来のビジネスを危ぶんでいる、と言う意味だから、訳語を変える。
懸念して



*0514 scan the classifieds in the newspaper
新聞の求人広告に目を通す

[解説]
classifieds は新聞のいわゆる三行広告のこと。多くは求人広告だからこれでもよさそうなものだが、正確を期す。
案内広告



*0561 make a presentation about business conditions
ビジネスの条件について報告する

[解説]
「報告」では「誰に」が問われてしまう。
presentation の意味は広いが、「ビジネスの条件」との兼ね合いから訳語を決めるのがよいだろう。
提示



*0637 conquer a nation with force of arms
暴力で国を征服する

[解説]
「暴力」ではヤクザのけんかみたいだ。
武力



**0685 force a person to sign the contract
契約書に署名するよう人に強いる

[解説]
force to do は「人を強いて…させる」の意味で、行為の成就を示す。
無理やり署名させる



*0687 gain crucial experiences in politics
政界でつらい経験を積む

[解説]
決定的→非常に重要→大変→つらい、と意味が狭まる。単語の意味を掴ませるには、広い意味を示したほうがよいだろう。
重要な



***0744 found an educational institution
教育機関を創立した

[解説]
これは
find found foundとfound founded founded の混同。
創立する



*0791 provide financial support for an underdeveloped country
発展途上国に金銭的援助をする

[解説]
今は
politically collect から underdeveloped country とはいわないのではないか。
直す:
underdeveloped countrydeveloping country



***0914 receive the money (that is) owing
未払いの金を受け取る

[解説]
owing の訳が「未払いの」となることもあるが、「当人が他人に対して未払い」→「借りている」ということ。
例:Is there still any money owing? (まだ借りている金がありますか)。
本英文は「借りている金を受け取る」ことになっておかしい。
→英文を替える:
pay the money owing. 訳も替える:未払いの金を支払う



*0932 a mayor of profound thoughts
深遠な思想を持った市長

[解説]
「思想」なら、不可算名詞で
thought とでもなろう。可算名詞化され、具体的なものに転化する。
考えかた



**1062 be an offspring of Tokugawa family
徳川家の子孫である (offspring)

[解説]
offspring に不定冠詞は用いない、と英和辞書(ジーニアス、新英和)にある。
→英文を替える:
be the offspring of Tokugawa family



**1321 persuade a person to attend the class
授業に出るよう説得する

[解説]
persuade to do は「説得して…させる」で、行為は成就する。「出るよう説得する」では「説得できたのかどうか」不明。
説得して出させる



*1334 Make efforts to recover a persons confidence
努力して人の信頼を取り戻す

[解説]
make efforts to do は、上記と反対に行為の成就は含意しない。「…するよう努力する」。
信頼を取り戻すよう努力する

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