現在分詞の形容詞用法なんてカンタン?──動詞百類 その3  執筆者:川月現大(編集者)


■ 6. 現在分詞の形容詞用法
 現在分詞の形容詞用法とは、名詞をV-ingで修飾した表現のこと(※1)。最近見かけた参考書(戸澤全崇 2015: 106)では、過去分詞V-p.p.の形容詞用法とあわせて次のような説明があった。なお、2語以上の句で修飾する場合は後ろから修飾する(後置修飾)。

● 形容詞用法の V-ing・V-p.p.の意味

(元の動詞)

V-ing

V-p.p.

自動詞

進行「〜している」or 能動「〜する」
※ 進行か能動かは節に戻して考える

完了「〜してしまった」

他動詞

受動「〜される」

a baby sleeping in the room 【自動詞:進行】(部屋で眠っている赤ん坊)
=(a baby) who is sleeping in the room
a boy belonging to the club 【自動詞:能動】(その部に所属する少年)
=(a boy) who belongs to the club ※ belong は進行形にできない。
a fallen leaf 【自動詞:完了】(落ち葉 ← 落ちてしまった葉っぱ)
a broken windows 【他動詞:受動】(割れたガラス ← 割られたガラス)

 ここに挙げられた例文は問題ないように思える。これで説明し尽くされていればいいのだが、ことはさほど簡単ではない。
 第一に、感情動詞の場合は、上の定式化どおりにはならない。ちなみに感情動詞(※2)とは、「人に感情を抱かせる」あるいは「感情を抱いている」ことを表す動詞で、以下のように多数存在する。

  amuse(楽しませる)
  bore(退屈させる)
  disappoint(失望させる)
  excite(興奮させる)
  interest(興味を持たせる)
  tire(疲れさせる)
  satisfy(満足させる)
  surprise(驚かせる)

 一見してわかるように感情動詞の訳語で共通するのは、いずれも「〜させる」という訳語が使われているという点だ。日本語で「驚いた」という能動文は、英語では「was/were surprised」(驚いた ← 驚かされた)と受動文で表現しなければならない。つまり、感情動詞を使った文は、日本語と英語で態(ヴォイス)が異なるのである。
 となると、上記の「形容詞用法の V-ing・V-p.p.の意味」の表も修正が必要になる。他動詞の行は感情動詞以外と感情動詞の行の2つに分解すべきだろう。

(元の動詞)

V-ing

V-p.p.

自動詞

進行「〜している」or 能動「〜する」
※ 進行か能動かは節に戻して考える

 

完了「〜してしまった」

他動詞

感情動詞以外

受動「〜される」

感情動詞

能動「〜させる」
a boring teacher
退屈させる先生
→ 退屈な先生

受動「〜させられる」
a bored student
退屈させられた生徒
→ 退屈している生徒
→ 退屈した生徒

 表にはboreの例を挙げたが、ほかの例をひとつ挙げるとa tiring job(疲れる仕事)、a tired look(疲れた顔 ← 疲れさせられた顔つき)のようになる。上の表でひとつだけ注意しておくと、「退屈している生徒」のテイル形は進行(動作の継続)を表しているのではなく、状態の継続(=結果状態)を表している(※3)。

 第二の問題点は、現在分詞は時制(テンス)を表すことができないため、単に「〜する」と訳すべしと覚えてしまうと訳を間違えてしまうことである。内田恵 編著の『ちょっとトクする英文法』では、「文脈に合った解釈が必要な」ものについて、次のような例文を挙げていた。

(1)We shall arrive too late to catch the train leaving (= which will leave) at eight.

(2)A tile falling (= which fell) from a roof shattered into fragments.
 (屋根から落ちてきたタイルが粉々に砕けました。)

(1)の leaving は「(今より先の)8時に出発する」という未来時点の解釈となり、(2)の failing は「屋根から落ちてきた」という過去の解釈になる。
 過去分詞の形容詞用法も同じで「~した(された)」と一律には訳せない。以下の(4)などは、結果状態を表す「〜ている」を使うのが好ましい。

(3)the door closed (at eight)
 ((8時に)閉められたドア)
(4)the closed door
 (閉まっているドア)

 この検討を踏まえて、さらに表を改訂すると次のようになる。

(元の動詞)

V-ing

V-p.p.

自動詞

進行「〜している」or 能動「〜する」
※ 進行か能動かは節に戻して考える

 

完了「〜してしまった」
結果状態「〜ている」

他動詞

感情動詞以外

受動「〜される」

感情動詞

能動「〜させる」

受動「〜させられる」

 ここまでは、分詞が動詞的意味を持つ場合を考えてきたが、動詞的意味合いがなくなり、安井稔(1995: 69)の言う「分類的形容詞」として使われることがある。たとえば a sleeping bag は、「寝ている袋」ではなく「寝袋」である。a moving pavement は「動いている歩道」ではなく「動く歩道」で、a walking distance は「歩いている距離」ではなく「歩ける距離」となる。いずれも「進行」の意味はなくなり、「機能・性質」といったものを表す表現になっている。

 このほかに、特に現在分詞が前置修飾する場合、曖昧さが発生することがある。安井稔(1995: 80)の指摘によれば、a jumping doll は何の文脈的情報が与えられなかったら「(いま)躍っている人形」と解釈すべきではなく、「(バネ仕掛けなどで)躍る仕組みを持つ人形」つまり「躍る人形」と解釈するのが普通だとしている。だが a jumping boy だったらどうだろうか。この場合は文脈が与えられないと、いま少年がぴょんぴょん跳ねているのか(動作)、それともなにかにつけジャンプする少年(性質)なのかはわからない。さらに安井は、一般に進行を表す現在分詞が前置修飾するケースを見つけるのは「案外難しい」と述べている(※4)。たしかに、夜中に人形が踊りはねていたりしたら、それはホラーに違いない。



※1 ちなみに分詞とは、動詞と形容詞の性質を併せ持つ語のこと。
※2 心の状態について述べる動詞(心理動詞)、感情動詞・願望動詞(hope)・思考動詞(know、think)は通常は進行形にならないが、丁寧さ、ためらい、「思考」という動作を表現したいとき(I’m thinking.)は進行形をとる。
※3 日本語のテイル形は多義で、前回のエントリー「「テイル」七変化──動詞百類 その2」では、12の意味を取り上げた。
※4 逆に、現在分詞が後置修飾した場合はどうなるかといえば、たいていの場合、進行の意味を表す。a doll jumping は「躍っている人形」

【参考文献】
戸澤全崇(2015)『リンケージ英語構文100』旺文社
内田恵 編,桑原陽一/新妻明子(2011)『ちょっとトクする英文法』静岡学術出版:104
吉波和彦/北村博一(2011)『ブレイクスルー総合英語 改訂二版』美誠社
安井稔(1995)『納得のゆく英文解釈』開拓社

 

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