『英文解釈教室』を読み終えて「受講生編」 執筆者:進学校教諭

『英文解釈教室』1.1.4 例題 の英文 (2)

The element radium, discovered by the Curies, is probably the most remarkable substance in the world.

さて今月も前回に引き続き「副詞」を取り扱っていきたいと思います。
今回のテーマは
「上記の英文においてprobablyが文中に現れているのはなぜか」
という点です。このことについて考察する前にまず下記の英文をご覧ください。

(a) She probably has read the book. [ジーニアス英和大辞典]
(彼女はたぶんその本を読んでしまったのだろう。)

(b) The case will probably be dropped for lack of evidence. [リーダーズ英和大辞典]
(事件は証拠不十分のためたぶん却下されるだろう。)

これらの二つの英文に共通しているのは、いずれも「時制を表す要素」の隣にprobablyが位置しているということです。それではなぜprobablyは「時制を表す要素」に隣接しているのでしょうか。そこで次は「時制」について少し見てみることにしましょう。

時制とは「ある動作・状態が発話時よりも前か後ろか、それとも同時か、という時間関係を動詞の形式によって表す文法範疇」のことです。そして述べたことが「既に起こったこと」であればそれは「事実」であり、「まだ起こっていないこと」であれば「事実ではない」ことになります。すなわち時制とは結局、「事実であるかどうか」を表す働きをしていることになります。

このように「文の内容に対し話者がとる心的態度を表す語形」を「法(ムード)」と言います。具体的には発話内容が「確実である」とか「不可能ではない」とか「疑わしい」などのような事柄を示す動詞の語形のことです。例えば命題内容を事実として述べる「直説法」、相手に対する命令や依頼などを表す「命令法」、想像・仮定・願望など話し手の心の中で考えられたことを述べる「仮定法」などがあります。

ここでこれまで論じてきたことをいったんまとめてみましょう。

①時制とは「事実であるかどうか」を表す働きをする。

②文内容に関する話者の心的態度を示す動詞の形態を「法(ムード)」と言う。

③命題内容を事実として述べる際には「直説法」を使う。

読者の皆さんは上述の「話者の心的態度」という文言を見て何かにお気づきではないでしょうか。そうです、先月学習した文の意味内容を構成する「命題内容」と「モダリティ」と似たようなことを言っているのです。

ここで前回の学習事項を少し「復習」してみましょう。

[1]命題内容(話し手が述べようとしていること)

[2]モダリティ(命題内容を述べるときの話し手の心的態度)

(c) Probably, Jim was guilty. [ランダムハウス英和大辞典]
(おそらくジムは有罪なのだ。)

(c)の文では「ジムは有罪である」という命題内容に対しその話し手が「たぶん」と判断しています。少し「余談」になりますが、なぜジムは有罪になってしまったのでしょう。ジムは何か悪いことでもしたのでしょうか。例えば何かの腹いせに「復讐」したとか・・・。この一文だけでは「予断」はできません。

さてこの辺りで「復習」は終わりにして、一旦ムードとモダリティについてまとめてみましょう。ムードとモダリティはともに文が表す命題内容に対する話者の心的態度を表す概念です。ムードは一般に、「動詞の形の相違」として現れ、直説法、命令法、仮定法などの区別がなされます。一方、モダリティは法助動詞やpossibly, probablyなどの文副詞によって現れます。

では本題です。

1.1.4
The element radium, discovered by the Curies, is probably the most remarkable substance in the world.

上記の英文においてprobablyが文中に現れているのはなぜか。

この文におけるprobablyは(c)の例文と同様に話し手が文の表す内容に対して「たぶん」事実だろうと判断しています。これはつまり「文の表す内容が100%そうであるとは断言できないが、事実である可能性が割と高いと判断している」と言い換えることができます。

このように考えると時制を表す「is」と「probably」とのつながりが見えてきます。すなわちある行為・出来事が「事実かどうか」を表す時制と、「事実である可能性」がどれくらいあるのかを述べるprobablyは隣接する相性が大変良いということです。よって1.1.4の英文は「is(事実である)+probably(割と高い可能性で)」と言っていることになります。

上記のように考えれば文頭に現れることの多い文副詞のprobablyが文中に現れるのはある意味自然なことと考えることができないでしょうか。

参考文献
畠山雄二 (編) (2011)『大学で教える英文法』くろしお出版, 東京
景山太郎 (編) (2009)『日英対照 形容詞・副詞の意味と構文』大修館, 東京
中村捷 (2009)『実例解説英文法』開拓者, 東京
安藤貞雄 (2005)『現代英文法講義』開拓者, 東京
中村 捷・金子 義明 (2002) 『英語の主要構文』研究社, 東京
萱原雅弘・佐々木一隆 (1999)『大学生のための現代英文法』開拓者, 東京
安井稔 (1996)『英文法総覧』開拓者, 東京
江川泰一郎 (1991)『英文法解説』金子書房, 東京

辞書
小西友七・南出康世 編 (2001)『ジーニアス英和大辞典』大修館書店, 東京.
松田 徳一郎 (著, 編集) (1999)『リーダーズ英和辞典』研究社, 東京
小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集 (1993)『小学館ランダムハウス英和大辞典』小学館, 東京

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