英語の感覚を磨く英文法 ―mustとhave toの用法 執筆者:大手予備校講師

 今回はmustとhave toの違いについてです。文法的な違いと意味的な違いの2つの観点から記述していきます。
 まず文法的な違いですが、mustは純粋に助動詞なので後ろに来るのは動詞の原形です。一方、have toはto do「これから~する」状態をhaveしていると考えられるように、元々動詞の性質も兼ね備えています。これにより、過去形になったり完了形と用いられたり他の助動詞、例えばwillなどと共に用いたりすることが出来ます。

(1a) I’ve had to go to hospital every week for tests.
(1b) Families are having to hold two – sometimes three – jobs to make ends meet.
(1c) You’ll have to fill out this form to borrow the money.
(Leech, 2004: 83)

 次に意味的な違いを紹介します。まず、根源的である強い義務・必要を表す用法「~しなければならない」では、mustが主観的でhave toが客観的であるという違いが挙げられます。Leech(2004:83)によると、mustは話し手が何かをするのに重要、もしくは必要不可欠だと思ったことを表すために使われる一方で、have toは話し手の外から来る要素によって義務や強制が生じる場合に用いることが出来るとしています。

(2a) You must save that money to buy a house. (=”I’m telling you”)
(2b) You have to save that money to buy a house. (=”This is a financial requirement”)

mustは話し手が主観的にそうしなければならないと言う状況を表しますが、have toは外的要因から話者が仕方なくそうしなければならないと言っているので客観性が感じられます。この違いから、mustの方が相手に対する圧迫感が高いと感じられます。それゆえ、対人コミュニケーションでは、相手に対して比較的やんわりと義務や必要を迫ることが出来るhave toの方が好まれて使われていると考えることが出来ます。前回の記事に書いた、近年ではmustよりhave toの方がより一般的に使われるようになっているという理由も、have toのもつ客観性から様々な状況にフィットしやすいためだと考えられます。
 さらに、田中(2008:73)によると、mustの強制力が働きほかに選択肢がなく「どうしても~しなければならない」という解釈と、have toの何かをする状況を抱えているため「それをしなければならない」という解釈の違いから、以下のような状況ではmustは使えないと述べています。

(3a) I have to write up this report, but I guess I’ll go to the movies instead.
(3b) *I must write up this report, but I guess I’ll got to the movies instead.

(3a)は締め切りが迫っているなどの外的要因から、レポートを終わらせなければいけない状況にあるが、それをせずに代わりに映画を見に行ってしまおうと言っている場面での言葉です。一方、(3b)は自分の内面から(主観的に)レポートを終わらせるという強制力が働いている、つまり、自分でレポートを終わらせると決意しているにもかかわらず、すぐに代わりに映画を見に行ってしまおうと言ってしまう所が矛盾しているため、不自然に聞こえるようです。
 意味的な違いは、論理的必然性の用法にも見受けられます。前回の記事でmustについては触れましたが、have toにも「~に違いない」に相当する用法が存在します。しかし、この用法のhave toはmustに比べるとかなり使用頻度が下がるだけでなく、アメリカ英語を連想させるそうです(Leech, 2004:83)。ただ、近年ではイギリスでもこの用法の使用が増えつつあるそうなので、これからmust「~に違いない」と同等にhave to「~に違いない」も良く使われる表現になっていく可能性があります。
 英語は生き物のように時代と共に変化している言葉です。最近では、カメラなどを使って自分を撮ることを表すselfie(いわゆる自撮り)という言葉が生まれたり、日本語を借用してemoji(絵文字のこと)という言葉が定着してきたりしています。今後、助動詞の用法も使われなくなるものや新しい用法が出てくるかもしれません。

参考文献
Leech, G. (2004). Meaning and the English Verb (3rd ed.). London: Longman.
Swan, M. (1995) Practical English Usage, Oxford University Press, London.
Trudgill, P. and J. Hannah (1994) International English, Arnold, London.
澤田治美 (2006).『モダリティ』開拓社, 東京.
田中茂範 (2008) 『新感覚わかる使える英文法』ベネッセコーポレーション, 東京.

 

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