『英文解釈教室』を読み終えて「受講生編」 執筆者:進学高英語教諭

『英文解釈教室』1.1.4 例題 の英文

The element radium, discovered by the Curies, is probably the most remarkable substance in the world.

 

今回はprobablyという副詞に着目していきたいと思います。英語という言語は語順が厳しく固定されている言語です。その中でも副詞の位置は比較的自由に置くことができます。

問題となっているprobablyのように文内容の確実性に対する話し手の判断を示す副詞は、一般的に「文副詞」と分類されています。文副詞は文中に現れたり、コンマを伴って文末に生じることもまれにありますが、このprobablyという副詞は文頭に置かれることの多い副詞です。さてここで二つの疑問が浮かび上がります。

 

①    なぜprobablyという副詞は「文頭」に置かれることが多いのか。

②    上記の英文においてprobablyが文中に現れているのはなぜか。

 

今回と次回の二回に渡って考察をしていきますが、今回は①を取り扱いたいと思います。

この問題を考えるに際しては、slowlyという副詞と比較しながらprobablyの特徴を明らかにしていくことにしましょう。

 

(a)  Probably, Jim was guilty. (ランダムハウス英和大辞典)

(おそらくジムは有罪なのだ)

(b)  He looked me over slowly. (ジーニアス英和大辞典)

(彼は私をしげしげと見つめた)

 

(b)のslowlyは動詞を修飾する様態の副詞ですが、(b)の文を否定文・疑問文にしてみると、どちらの文においてもslowlyは否定の対象になることができます。

 

(c)   He didn’t look me over slowly.

(d)  Did he look me over slowly?

 

上記の(c)の文で否定されているのは、「しげしげと」です。(d)の疑問文についても同様に同じようなことが言えます。ところが、(a)の文を否定文にしてみると、probablyは否定の対象にはなりません。以下の(e)は、否定された文に対して「たぶん」と言っているのであり、「たぶん」そのものが否定されているわけではありません。また(f)に見られるように、疑問文との相性もよくありません。

 

(e)   Probably, Jim wasn’t guilty.

(f)   * Probably, was Jim guilty?

 

以上slowlyとprobablyという二つの副詞を比較してわかるのは、slowlyは動詞句にかかる文の一部であるのに対しprobablyは文全体を対象としているということです。つまり(a)のprobablyは、Jim was guiltyという命題内容(メッセージ内容)に対して、「たぶん」事実だろうという話者の判断を表しているのです。言い換えれば(a)は(g)のように文の外側にprobablyが付いていると考えてみてもいいかもしれません。

 

(a)  Probably Jim was guilty.

(g)  [Probably [Jim was guilty]].

 

ではなぜprobablyという副詞が文頭に来ているのか。それは「文内部の意味構成」という観点と、「人間の認知のしくみ」という二つのことが関わっているからではないでしょうか。

文の意味というのは命題内容(話し手が述べようとしていること)とモダリティ(命題内容を述べる時の話し手の心的態度、気持ち)から成り立っていますが、人間は何かを発する際には「どういう風な態度で持って話しをするか」ということを発話の瞬間にまず思います。

(a)のProbably, Jim was guiltyの文では「ジムは有罪である」という命題内容に対し、「たぶん」という判断を発話の瞬間にしていると言えます。

文内容に対する話し手の判断を示すprobablyは文頭に来ることが多いのは、まさに上記のことが表現形式にも反映されているからではないでしょうか。

 

参考文献

畠山雄二 (編) (2011)『大学で教える英文法』くろしお出版, 東京

大西泰斗・ポールマクベイ (2011)『一億人の英文法』株式会社ナガセ, 東京

安武知子 (2009)『コミュニケーションの英語学』開拓者, 東京

景山太郎 (編) (2009)『日英対照 形容詞・副詞の意味と構文』大修館, 東京

中村捷 (2009)『実例解説英文法』開拓者, 東京

田中茂範 (2008)『文法がわかれば英語がわかる』NHK出版, 東京

安藤貞雄 (2005)『現代英文法講義』開拓者, 東京

萱原雅弘・佐々木一隆 (1999)『大学生のための現代英文法』開拓者, 東京

安井稔 (1996)『英文法総覧』開拓者, 東京

江川泰一郎 (1991)『英文法解説』金子書房, 東京

 

辞書

小西友七・南出康世 編 (2001)『ジーニアス英和大辞典』大修館書店, 東京.

小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集 (1993)『小学館ランダムハウス英和大辞典』小学館, 東京

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