仕事の流れと進め方  執筆者:北川知子(出版翻訳者)

たまに雑誌の記事やブログの翻訳をすることもあるが、現在のところ、ノンフィクションの翻訳が仕事の大半を占める。ジャンルは経営、経済、歴史、心理学、教育など、訳書は17冊(共訳書3冊を含む)。今回は、仕事の流れと進め方について書いてみたい。

仕事を依頼されると、最初に2週間~1か月ほどかけて冒頭部分を訳し、試訳を編集者の方に読んでいただくようにしている。試訳を送ってくださいと言われる場合もあるし、私の方から送りますと言う場合もある。この作業は助走のようなもので、その本をだいたいどれくらいのペースで訳せるのかを測るうえでも役に立つ。試訳に対しては、「これで進めてください」と言われることが多いが、細かい指摘をいただくこともある。この段階で、必要に応じて参考になる本や用語事典を揃える。

その後の数か月間は、ひたすら訳す。内容や分量にもよるが、依頼時から3~4か月先を締め切りとして提示されることが多い。ようやく訳稿が完成しファイルを送付すると、出版社での編集作業を経て1か月前後で初校ゲラが送られてくる。初校ゲラには、編集者の方が疑問に思われた点や修正を要する点についての指摘や提案が鉛筆で書き込まれていることが多い。校正に使える時間はそのときどきで違うが、おおむね2週間ぐらいだろうか。返送すると、2週間ほどで再校ゲラが出てくる。再校は1週間ぐらいで終わらせる場合が多いように思う。初校や再校ゲラの校正と平行して訳者あとがきを書くこともある。

初校の段階で、あらためて原文とつき合わせると、誤訳や思い込み、勘違いに気づくことが少なくない。ときには再校でとんでもない間違いに気づき、青くなることもある。最初に訳稿を送る時点でできるだけ完成度の高いものを作り、ゲラにはほとんど赤を入れずにすむようにしたいと思いながらも、毎回反省する点は多い。訳す作業を終えた時点で1か月ほど時間を置き、そのあとで読み直せばかなり改善されるはずだ。1か月とまではいかなくても、1~2週間寝かせる時間を取ればずいぶん違ってくると思うのだが、最後はどうしても押せ押せになってしまい実行できていない。

PDCAというサイクルがある。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)で効率的に仕事を回しましょう、という考え方だ。どの部分が得意かは人によって違う。私の場合はとにかく「Plan→Do」が苦手だ。小学生の頃から夏休みの宿題を計画どおりにやれたためしがなく、これが自分だとあきらめている。翻訳作業でも、計画はおおざっぱに立て、訳す作業を〇月まで、見直しを〇月まで、というようにざっくり進める。とはいえ、見直し段階に入ると、すでに締め切りは目の前に迫っているため、別人になったかのようにページ数を日割りで決めてこなしていく。それなら最初から別人になればいいのだが、なかなかそうもいかない。6月から取りかかる仕事では、これまでとは少し違った工夫もしてみようと考えている。そういった試行錯誤についてもこの場を借りて報告したい。

 

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