英語の感覚を磨く英文法 ― aboutとaroundの用法 執筆者:大手予備校講師

 今回はまず、田中茂範先生のなるほど講義録3『ネイティブ感覚の英語力アップ 英語のパワー基本語』に紹介されているaboutとaroundの興味深い違いから紹介しましょう。ちなみに、現在ブログでシリーズ化している前置詞の話はこちらの本をメインに参照して書かせていただいています。

(1a) I want to talk about the purposes of education.
(1b) I want to talk around the purposes of education.
 

aboutとaroundは非常に似ている前置詞です。ほとんど同じ意味で使える用法もたくさんあります。しかし上の例では明らかな意味の違いがあります。その違いは何でしょうか。また、こういった意味の違いが生まれるのはなぜでしょうか。前置詞のイメージを基にこれら2つの文を比較してその答えを後半に載せたいと思います。
 まず以下にaboutとaroundのコアイメージを紹介します。

about around
about around
(田中、2011:65) (田中、2011:63)

aboutは「何かの周辺に、辺りに」というコアミーニングを持っています。一方、aroundのコアは「何かの周囲に」というものです。これらのイメージから生まれる用法で、意味にほとんど違いが出ない用例をいくつか挙げてみましょう。

(2a) Let’s walk about Kamakura. 鎌倉を散策しよう (田中、2011:65)
(2b) Let’s walk around Kamakura. (同上)
(3a) It’s about seven. だいたい7時です (同上)
(3b) It’s around seven. (同上)
(4a)Is your Mum around? ママは近くにいる? (大西・ポール、1996:160)
(4b)Is your Mum about? (同上)

上記の例はaboutとaroundの持つ「~のまわりに」と言う意味から生まれた用法です。これらの例ではaboutとaroundはほば同じように用いることが出来ます。一方で、最初に挙げた(1a)と(1b)では意味の違いが明確に出ています。もう一度以下に日本語訳と共に(1a)と(1b)を載せておきます。

(1a) I want to talk about the purposes of education.   教育の目的について話したい
(1b) I want to talk around the purposes of education. 教育の目的を避けて話したい
                                                                                       (まともに話すのを避けたい)

(1a)のaboutは誰もが知っている「~について」という意味です。なぜaboutがこの意味になるかと言うと、例えばお金の話であれば、「お金を中心としてそれに関わる周辺の事をあれこれを話す」という感覚から「お金について話す」となります。つまり、お金の話を中心にそれにまつわること、例えばお金の運用や貯金や価値といった色々なことについての話をすると解釈できます。一方で、aroundになると「何かの周囲」というコアイメージから、話の核心ではなくその周囲の事に焦点が当たります。お金の話であれば、直接的にお金に触れることはせずその周辺の話題、例えば生活が困窮している事や、経営が悪化しているようなことを話すことで、「回りくどくお金の話をしている」感覚が生まれます。
 この意味の違いから、(1a)は「教育の目的についてあれこれと話をしたい」という意味になり、(1b)は「教育の目的には触れずにその周辺の事柄について話をしたい」、つまりは「教育の目的についてまともに話すのは避けたい」という意味が出てきます。
 こういったコアイメージの違いから生まれる微妙な意味の違いを分析するのは大変興味深いと思います。それでは最後に、良く目にするaboutとaroundの慣用的な表現をコアイメージを参照しながら解説して、今回のブログの結びとしたいと思います。

(5)be about to do: 「まさに~するところだ」
(6)It’s about time~: 「もう~しても良い頃だ」
(7)~ be just around the corner: 「もうすぐ~だ」
(8)around the clock: 「24時間、一日中」
(9)all the year around: 「一年中」

(5)は以前紹介したto doのコアイメージ「これから~する」とaboutのコアイメージ「何かの周辺」が相まって「これから~する”周辺”にいる」、つまり「まさに~するところ」という意味になります。(6)は「~する時の周辺にいる」、つまり「もう~しても良い頃だ]という解釈になります。(7)は私もお気に入りの表現ですが、イベントや楽しみなことがすぐそこまでやってきているというのを表す表現で、「~が角のあたりまできている」という感覚から「もうすぐ~だ」という意味になります。(8)と(9)も同様に時計の針がくるっと一回りする感覚から「一日中」、一年という期間をぐるっと回るイメージから「一年中」といった意味が出てきます。ちなみに、(9)は前置詞ではなく副詞の用法ですが、品詞が副詞になったとしてもaroundのコアイメージが変わるという事はありません。そのため、以前も少し話題に挙げましたが、前置詞の形をした副詞も前置詞のコアイメージを基に考えると解釈し易くなっていきます。脱丸暗記して、柔軟な発想を身に付けていきましょう。

参考文献
大西泰斗・ポール・マクベイ (1996) 『ネイティブスピーカーの前置詞』 研究社, 東京
田中茂範 (2011) 『ネイティブ感覚の英語力アップ 英語のパワー基本語』コスモピア, 東京.
田中茂範・武田修一・川出才紀 編 (2003)『E-Gate英和辞典 [携帯版]』ベネッセコーポレーション, 東京.

 

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