英文教室と私 執筆者:北川知子(出版翻訳者)

はじめて柴田先生の講義を受けたのは、かれこれ14、5年前のことだ。大学では本格的に英語を学ぶ機会がなく、社会人になってからも、受験英語のおぼろげな知識だけが頼りだった。本人は、それなりに理解できていると思い込んでいて、本当の意味で「読める」という状態から程遠いことに気づいてもいなかった。何がきっかけだったかは思い出せないが、柴田先生の講座に参加しようと思ったのも、受験英語の貯金を実はとうに使い果たしていると、薄々感じていたためかもしれない。

そんな私にとって、英文を「一点の曇りなく読み解く」という柴田先生の講義はまさに衝撃で、初回の講義のあとは久しぶりの密度の濃い学びに朦朧としながらも、帰り道では周囲の景色がどこか違って見えたのを覚えている。その後、昼間の仕事のかたわら、夜間に英文教室に通い、2009年に翻訳の仕事を始めてからは、このブログのタイトルにもなっている『英文解釈教室』の講座を受講した。

英文教室では、3年ほど前から月に一度、研究会が開かれている。翻訳や英語、言葉、出版などにまつわるお話を各界の講師から聞く会で、在校生や修了生なら誰でも参加できる。この会を通していろんな方とお話しする機会が増えたのはうれしいことだ。

転職してまもない頃は、スケジュール管理にも自己管理にも不慣れで、研究会も欠席がちだった。2年ほど前だっただろうか。翻訳者としての暮らしにも少しずつ慣れ、生活にメリハリをつけるためにも、せめて月に一回の研究会にはできるだけ参加しようと決めた。研究会にちょろちょろ顔を出しているためなのか、今回、このブログの執筆陣に加えていただくことになった。

出版翻訳者でブログを書いておられる方は多い。翻訳のノウハウはもとより、出版翻訳の世界の実情をさまざまな側面から描いたものもよく見かける。私のブログは屋上屋を重ねることになるのかもしれないが、書くことは自身を振り返ることにつながる。翻訳の仕事を始めて7年目に入った今、もはや新人とは言い難いものの、一歩進むたびに山は一層険しくなっているようにも感じる。そんな日々の中での現在進行形のあれこれを、いただいた機会を活かして綴っていこうと思う。ときには脱線することもあるだろうが、お許し願いたい。

 

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