言葉がつくられる時、脳の中で何が起こっているのか??~②記憶の仕方とその使われ方~ 執筆者:仏DALF資格者

「なくなって初めてわかる事がある」のが世の常といいますか、時に普通でない状況に陥る事で気付きを得る経験は誰しもあるかと思います。今回も前回と同じテーマで、僭越ながら経験談をもう1つ。例えば筋肉痛になると、日常のどの動作でその筋肉が使われているかが感覚としてわかったりしますが、それが脳の中で起こった時の話です。

それは、ある朝起きたら日本語も外国語もうまく理解も話す事もできなくなった、という冗談みたいな経験でした。各情報へのアクセスが遮断され、うまく引き出せない感じだったのですが、前日の特大片頭痛により一時的に出た症状のようでした。その時の状況から学んだ事が、以下の3点です。

①脳内の各場所に役割があり、連携して1つの動作が完成
言語処理は左脳の管轄ですが、その中でも前方部分に文法や文章理解(=文の組立て)、中央部分に単語・音韻等の情報(=パーツ)の担当域があるといいます。私が痛みを感じたのは中央部分だけだったのですが、これは文法知識は無傷なのに単語やその発音が思い出せないという、当時の状況と完璧に合致します。かなりざっくり言うと、言語の入力・出力は、以下の手順を高速処理する事で成立しているそうです。
1)視覚・聴覚情報等を認識
2)それを左脳で理解、回答文作成をして右脳に送る
3)右脳で抑揚をつけ、口・筋肉を動かす指示を送る

②言語により、単語情報の構成が異なる
状況整理の為に日本語・仏語で読解をしてみた所、以下の差異がありました。

<日本語>漢字を見て意味はわかるが、発音が思い出せない。発音を聞いて漢字が思い浮かばないと、意味も思い出せない。→発音と語義は直接つながっていない
<仏語>例えば料理名を思い出せなくても、その材料のイメージが出て来たり、また発音規則は覚えていたので、発音してみると思い出す事も。→文法知識・関連イメージと強いつながり

仏語に関しては、文法の理屈から入り、留学中の生活イメージと共に学習したという学習過程がそのまま、記憶構成に現れています。また日本語の方から、視覚を通して記憶しているという自分の傾向も発見でした。

③忘れなかった記憶には、右脳担当の要素とつながっているものが多かった
忘れなかった語彙には、そのニュアンスや込められた感情等、右脳担当の情報があるものが多い事に気付きました。実際、問題集を暗記しただけの受験英語の遺産は一瞬で消えましたが、例えば「give me a break!」の様な、特定の場面や感情と強く結びついた常套句はびくともしませんでした。他にも何か関連する画像や、音楽等、左脳だけでなく右脳とつながっている事が、いわゆる「頭でわかっている」と「刷り込まれている」の違いかもしれないと感じました。

次回は、この長い2回の前座を経まして、真のテーマ「どうやったら良質な記憶を、なるべく効率的積み上げられるか」について、脳を知るというアプローチから考えてみたいと思います。

 

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