英語の感覚を磨く英文法 ―forの用法 執筆者:大手予備校講師

forには「意識がある対象に向かっていく」感覚があり、この「何かに向かって」というのがコアミーニングになります。以下に田中(2011)が紹介しているforのイメージを載せておきます。

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この「何かに向かって」というコアミーニングを念頭に置いておけば、forが持つ様々な意味・用法に柔軟に対応することが可能です。
例えば、良く駅で耳にするThis train is bound for Tokyoという表現では、電車が東京方面へ向かっているということを表すのでforが用いられます。この表現に関しては良くtoとの違いで説明されます。以下を見てください。

(1a) I went to Tokyo.                             東京へ行った。
(1b) I left for Tokyo.                              東京に(向けて)出発した。
(1c) I gave a preset to her.                    彼女にプレセントをあげた。
(1d) I bought a present for her.           彼女にプレセントを買った。

(1a)はtoの「相対する」というイメージから実際に東京へ行ったことを含意しますが、(1b)はあくまで東京に向かって出発しただけで、到着したかどうかまでは言及していません。同様に(1c)は実際に彼女にプレゼントを手渡している事を含意しますが、(1d)は彼女を意識してプレゼントを買ってはいるものの、そのプレゼントを手渡したかどうかまでは分かりません。もしかしたら、彼女のために買ったプレゼントですが、結果的に渡せずに自分で持っているかもしれません。前置詞のtoには対象に到達する(向かい合う)意味が含まれているので動詞のgiveが持つ「対象[目的語]を誰かに与える」という意味と相性がいいです。一方、buy(買う)という行為自体は、「対象[目的語]を(誰かに与えるために)買う」という意識はありますが、実際に相手に手渡すという意味までは含まれていないので、forとの相性が良いわけです。

その他の用法も見てみましょう。

(2) We fought for liberty.               我々は自由を求めて闘った。
(3) I’ve been studying for three hours.        3時間勉強し続けている。
(4) It’s important for you to do it.                君にとってそうするのが重要だ。
(5) I paid 10 dollars for the pen.            そのペンに10ドル払った。
(6) Are you for or against the project?         その計画に賛成ですか反対ですか。
(7) You can’t see the wood for the trees.     木を見て森を見ず
(8) She is responsible for the project.           彼女はその計画の責任を負っている。

(2)は「何かに向かう」という意味が転じて、「何かを求めて」となります。自由を求めて、つまり自由のために闘ったわけですね。(3)は時間の流れを指した場合です。勉強し始めて3時間という時間の目安に向かっている感覚です。(4)は意味上の主語と呼ばれる用法ですが、It’s important to do it(そうするのが重要だ)という判断がhim(彼)に向かっていると考えるとなぜfor himが「彼にとって」と解釈するのかイメージできると思います。(5)は交換のforと言われたりしますが、10ドル払うという行為の向かっている先はthe penを手に入れることですから、「ペン(を手に入れること)に向かって10ドル支払った」と解釈すると分かりやすいです。(6)は賛成を表すforの用法です。「何かに向かう」ということは「賛同したから向かう」とも解釈できるので、意味が転じて賛成を表す用法が生まれたと考えられます。(7)は原因・理由を表すforの用法です。You can’t see the wood(森を見ることが出来ない)の原因究明の矛先がthe trees(木)に向かっているわけです。結果として、木を見てしまう為に全体像である森が見れないという解釈になります。最後に(8)ですが、She is responsible(彼女は責任を負っている)という状態が向かう先がthe project(その計画)になるので、「彼女はその計画に対して責任を負っている」という解釈が出てきます。責任を負う範囲がその計画になるので[範囲]を表すforとも言われます。
以上でforに関する内容は終りです。最近の傾向として、このようにコアミーニングを駆使して文法や語彙を捉えていこうとする流れは主流になりつつあります。実際に、このようなやり方で英語に触れた方が、より理解も深まるし、自然な英語を使いやすくなります。今後英語を真剣に習得したいと考えている方は、英語のコアミーニングを意識しつつ英語に接するようにしましょう。

参考文献
大西泰斗・ポール・マクベイ (1996) 『ネイティブスピーカーの前置詞』 研究社, 東京
田中茂範 (2011) 『ネイティブ感覚の英語力アップ 英語のパワー基本語』コスモピア, 東京.
田中茂範 (2008) 『新感覚わかる使える英文法』ベネッセコーポレーション, 東京.
田中茂範・武田修一・川出才紀 編 (2003)『E-Gate英和辞典 [携帯版]』ベネッセコーポレーション, 東京.

 

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