「切り餅」と「修飾語」 執筆者:鯛焼き

 お正月にはお餅を食べますか。餅は関東では切り餅なのですが、関西では丸餅なのだそうですね。なので、もしかしたら、これは関東限定の話題なのかもしれません。

 TVコマーシャルの影響なのか、切り餅と言えば、の「サトウの切り餅」を思い浮かべてしまいます。食べたことはないのですが、商品名はしっかりと刻みこまれています。

 この「サトウの切り餅」をめぐり、サトウ食品と越後製菓との間で裁判が繰り広げられました。サトウ食品が越後製菓の特許権を侵害したというのがその内容です。

 越後製菓の特許発明は、

「焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,この切り込み部又は溝部は,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として,焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする餅。」(下線筆者記入。)

というものです。なんのこっちゃという感じでしょうか。

一方、当時の「サトウの切り餅」には、側周面と上面に切り込みがありました。

問題となったのは、「載置底面又は平坦上面ではなく」という記載部分です。

東京地方裁判所では、「載置底面又は平坦上面ではなく」とあるので、「上面」にも「切り込み」があった「サトウの切り餅」は、これに該当しないとして、特許権を侵害しないと判断しました。

これに対して、これに続く、知的財産高等裁判所は、「載置底面又は平坦上面ではなく」は「この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に」に係るのであって、「載置底面又は平坦上面」に「切り込み」があるかないかには関係がないのだと判断しました。「載置底面又は平坦上面ではなく」の後に「、」がないじゃないかと。結果、サトウ食品は裁判に負け多額の賠償金を支払うこととなりました。

皆さんはどう思いますか。どちらの裁判所の判断のほうがしっくりときますか。しかし、そもそも「載置底面又は平坦上面ではなく」という記載は必要だったのでしょうか。

トースターの中で、切り目のない切り餅が無秩序に香ばしく膨らんでいく。お正月だ。

以上