建築デザイン 執筆者:鯛焼き

 工業デザインを保護する「意匠法」が大幅に改正され、来年4月から、物品に記録・表示されていない画像や、建築物の外観・内装のデザインが新たに意匠法の保護の対象となります。画像については、話がややこしくなりそうなので、今回はご勘弁いただき、建築物のデザインのお話を中心にいたします。
 従来、建築物のデザインは、外観内装を問わず、法の保護の対象にはなっていませんでした。それを今回の意匠法改正で保護しようとしています。その保護は、これも今回の改正により、意匠登録出願から25年迄となります。これが20年である特許権よりも長い保護が与えられることになります。
 日本の意匠法は、1888年(明治21年)12月1日公布、1889年(明治22年)施行の「意匠条例」に、その起源があります。制定の目的は、幕府が締結した不平等条約改定に向けての布石にあったようです。「バウハウス(Bauhaus)」の設立が1919年ですから、そこから遡ること30年前には、工業デザインを保護する法律が日本にあったということになります。
 さらに時代を遡ると、オットー・ワーグナー(Otto Wagner、1841 – 1918年)の「郵便貯金局 Postal Savings Bank(1906年-1912年)」に代表される「ユーゲント・シュティール (Jugendstil) 」という芸術運動もありました。「バウハウス」もまた建築物のデザインを包含する活動でした。
 そんな建築物に関してですが、例外的ではありますが、日本でも、意匠法以外の法律で保護される場合があるとされていました。ひとつは著作権法です。高い芸術性を持つ建築物は著作物として保護されうるというものです。
 もうひとつは標識等を保護する法律です。不正競争防止法・商標法です。コメダ珈琲事件(東京地判平成28年12月19日)が参考になるかと思います。この事件では、裁判所は、コメダ珈琲の店舗の外観(店舗の外装、店内構造および内装)が特定の営業主体(コメダ珈琲)を識別する営業表示性(これを見たらコメダ珈琲と混同してしまうほどの)を獲得し不正競争防止法2条1項1号および2号にいう「商品等表示」に該当するとして、債務者の店舗用建物の使用等の差止めを認めました。この判決自体は画期的なものですが、しかし、これも、例外的な建築物の保護にとどまります。
 このコメダ珈琲事件が、そのきっかけのひとつとなって、今回の意匠法改正がなされたようです。
 とうに成熟期を迎えてしまっている工業立国日本は、どこに向かって行こうとしているのか。などと大層なことを考えながら、今回の意匠法改正を眺めてみても面白いかもしれません。

以上