街ゼミ  執筆者 日々わくわく子(時々翻訳者)

私の住んでいる町では、「街ゼミ」と言って地域活性イベントのような催しが年に何回か開かれる。内容は主に健康、美容、食生活、スポーツ、その他がテーマで、小規模ではあるがそれぞれの場所で開催される。私はその中で、劇の台本を朗読する講座に参加してみた。場所はある小さな雑貨店で、そこの女性オーナーが主宰者だ。何でも彼女は以前に自分の劇団を持って活動していたそうだ。当日も自ら台本を準備していて、そこへ私を含む4名が参加した。朗読する前に、まずウォーミングアップから始まった。普段したことのない体の動かし方、口の開け方、発声と早口言葉の練習を行った。参加者の中にたまたま昔プロの演劇をやっていた男性がいて、その朗々たる声の響きは秀逸だった。さすが訓練を受けていた人は違う。
さて4名の参加者は、それぞれ台本中の登場人物の役を割り当てられた。尺にして10分程の物語で、内容はあるローカルの自治会の集まりでの話。自治会長と旧知のメンバーが2名、そして最近引っ越して来た新メンバーが、近隣で起きているトラブルについて話し合う。最初に言ってしまうと、これは一種の喜劇である。 新人のメンバーは遅れて来たために、問題の焦点が見えていない。何やら「ゴミが荒らされた」、「宝石が盗まれた」、「誘拐された」と言う言葉が皆の話し合いの中で飛び交う。日本語の巧妙なところで、主語が隠されているので、このような悪さをするのは誰なのか検討がつかない。最後に新人メンバーに、犯人はカラスだと明かされるのだが(ちなみにカラスは亀を誘拐したり、キラキラ輝く物を取るのが好きなのだそうです)、会議の方はせっかく集まったのに解決の糸口がみつからず、ため息で終わる。それに到るまでの、各人による会話の応酬を私たちが順に受け持った。もはや朗読ならぬちょっとした演技の域。それぞれの個性で感情の入れ方が違い、とても面白い。もちろんセリフの妙味もあるのだが、先に言った演劇経験者のみならず、未経験者達(言い遅れたが、男性一名以外は女性三名)が初見のセリフを物怖じもせず読み上げるのがすごい。今の人って素人でも度胸があるのだろうか。それぞれの役割を変えて三回やってみたのだが、段々盛り上がって楽しくなって行った。と同時に結構疲れるなと思った。「感情を入れると疲れるんですよ」と、演劇経験者の方が一言。肉体労働なのだ。
私にとって始めての朗読演技経験は新鮮だった。軽い気持ちで参加したら、わずかではあるが奥深さを感じた。これも一種の自己表現、感情の発露、ストレス解消かな、悪くはないなと思った。台本を書いたオーナー女子も、身近に起こることから拾い上げて物語を作ったそうだ。そこは才能がなければまとめられないのだろうけれど、我が町にそういう人材が存在するのも面白い。街ゼミの中でもユニークな部類だった。参加してよかった!