I’m sorry  執筆者:Penny(翻訳ジム修了生)

 先日大坂なおみ選手がテニス全米オープンを制覇し、日本人選手としてはじめて四大大会での優勝を成し遂げた。私自身プレイはしないけれど、小さなころから家族が続けていたり、全豪オープンの試合を現地で観戦したこともあって、テニスは一番馴染みの深いスポーツだ。大坂なおみ対セリーナ・ウィリアムズの試合も、早朝に放送された中継は観られなかったけれど、同日の再放送で観戦した。結果はニュースですでに知っていたし表彰シーンも一部は観ていたのである程度覚悟はしていたけれど、実際試合を観戦したら思っていた以上に感情的になってしまった。特に優勝台に立った大坂なおみ選手の口からI’m sorryという言葉を聞いた時は、悲しくて仕方がなかった。長年の憧れの相手セリーナに全米オープンの決勝戦で勝つというまさに夢がかなった瞬間には、あまりにふさわしくない言葉だと感じた。それと同時にこの”I’m sorry”の取り方は議論を呼ぶのではないかと思った。実際、「勝ってしまってごめんなさい」と訳したメディアに対して、誤訳だとする指摘するネットの記事も出ている。

“I know everyone was cheering for her and I’m sorry it had to end like this. I just want to say thank you for watching the match.”

Sorryには単純に謝罪の意味以外に、残念に思う、情けなく思う、後悔している、悲しく思うなどの意味がある。私自身も文字に起こされたセリフを読んだだけだったら、「ごめんなさい」と訳すのは間違いだと取られる可能性が高いので、「残念に思います」くらいにとどめたかもしれない。「勝ってしまって」とまでつけてしまったことは、少々やりすぎだとは私も思う。でも大坂なおみ選手の声のトーンと表情、そして後のインタビューで、”I felt like I had to apologize.”とはっきり言っていることからも、あれが謝罪の言葉であったことは明らかだ。事前に書かれた原稿を読み上げているのではなく、しかも感情的になっている時に生身の人間から出る言葉は、必ずしも筋が通っているわけではないし、時には矛盾していることもある。機械翻訳が進化してきているとは言え、ある意味人間らしさとも言えるそこを汲み取ることができるのは、やはり人間なのではないかと少し希望を感じる。