自分をコントロールする 執筆者:流浪の会計士

 ある回の英文精読ゼミでは、サマセット・モームのサミング・アップからの次のテキストを読みました。

It is evident that no professional writer can afford only to write when he feels like it. If he waits till he is in the mood, till he has the inspiration as he says, he waits indefinitely and ends by producing little or nothing. The professional writer creates the mood. He has his inspiration too, but he controls and subdues it to his bidding by setting himself regular hours of work.
作家たる者、書きたいときだけ書けばよい、というわけには行かない。書く気分になるまで待っていたら、いわゆるインスピレーションが湧くまで待っていたら、無限に待つことになり、結局ゼロ又はゼロに近い量の仕事しかしないで終わる。作家は自分で気分を生むのである。インスピレーションが湧くこともあるけれど、仕事をする一定の時間を決めることによって、インスピレーションをコントロールし、自分好みに使えるようにするのである。(注1)

 この文章を見て、作家の村上春樹さんが、アメリカの作家レイモンド・チャンドラーによる小説を書くコツ(村上さんはこれを「チャンドラー方式」と命名しています。)について紹介しているのを思い出しました。いわく、自分が文章を書くのに適したデスクを定め、そこに原稿用紙や万年筆や資料を揃えておき、いつでも仕事ができる態勢をキープしておかなければならない。そして、毎日ある時間を―例えば2時間なら2時間を―そのデスクの前に座って過ごしなさい。どんなに書けないときでも、一定の時間、机の前に向かってじっとしているのである。じっとしている間は他のこと(例えば、本や雑誌を読んだり、音楽を聴いたり、誰かを話をしたりするなど)をしてはいけない。書くのと同じ集中的な態度を維持するのである。そうすれば、たとえその時は1行も書けなくても、必ずいつかまた文章が書けるサイクルがまわってくる、と(注2)。
 いつでも書けるように日頃から自分をコントロールしておく必要があるというわけですね。

 自分をコントロールするということでは、最近、自分自身のこれまでの英語学習の態度で思ったことがあります。以前このブログに書いたように、昔からNHKラジオの英語番組を聴いていますが、ここ数年は、本放送ではなく、ストリーミング機能を利用して自分の都合の良い時間に聴いています。ただ、耳で番組を聴きながら、その間ヒマな手を動かして、ついつい他のウェブサイトやアプリを見てしまうのです。当たり前ですが、一度に2つのことはできませんよね。これでは学習効果が薄いことに最近ようやく気づき、悪い癖ができないよう工夫しています。例えば、聴いている間は、マウスを手の届かないところに置く、スマホは画面操作ができないよう裏返しにして机に置く、あるいはポケットに入れてしまうとか。一回の放送時間はたった15分なのだから、これぐらいの間は余計なことをせずに、じっと番組に集中できるよう自分をコントロールしたいものです。
 あなたはこんなことはありませんか?集中するために工夫していることはありますか?

(注1)モーム著/行方昭夫訳「サミング・アップ」岩波文庫、p.214。
(注2)村上春樹「村上朝日堂 はいほー!」新潮文庫、p.39。