映画の話 執筆者 日々わくわく子(時々翻訳者)

フランス映画が好きでたまに見たりする。先日TSUTAYAでレンタルして来たのは「婚約者の友人」で、フランソワ・オゾン監督の2017年度の作品。面白かった。そして、何日経ってもよかったなと心に残る映画だった。謎の部分がいくつか仕組まれていて、分からない部分もあったので二度見したら、より深く味わいを感じた。オゾン監督は作品によくミステリーを取り入れるらしい。名前はよく耳にするけれど、ずいぶん前の「八人の女」以来、彼の作品は見ていなかった。

この映画、ネタバレしない程度にストーリーについて書いてみると、時は第一次大戦後のドイツのある都市。大戦で婚約者を失った女性の所に、彼の友人と名乗るフランス人の男性が訪ねてくる。彼女と婚約者の両親は始めはとまどいを見せた。ドイツ人に取って、敵国から来た人間は受け入れられなかったからだ。しかし、友人だったという男の話を聞く内に、皆は次第に心を開いて彼に歓迎の気持ちを示すようになる。女性はかつて婚約者と訪ずれた美しい森や湖をその男に案内する。次第に二人の心は近づき出す。しかし…。ここからがオゾン監督の腕の見せどころ、ストーリーは思わぬ方向へと展開する。

要するにこれは反戦映画だと、私は思った。戦争は酷だ。愛する者を引き離し、予期せずに始まった新しい愛も、傷ついた者どうしに希望を与えてはくれない。この映画で私が面白いと思ったのは、婚約者の父親が愛する息子を戦いに行くようにと鼓舞し、死なせてしまったと自ら責任を感じている部分。また、英米の小説には開戦となると、軍隊に入っていないのに自発的に志願する若者の話が出てくる。日本の戦争の場合は、第二次大戦しか知らないが、徴兵されたらお国のために否応なくではなかったか。結果死を迎えるのは同じなのだが。この映画の中で、フランス人男性がドイツ滞在中に居酒屋で冷たい視線を浴びたり、逆にドイツ人の女性が、ドイツからパリへ向かう列車に乗って国境を越える際に、フランス人警官にパスポート提示を求められて疑いの目を向けられる場面。それぞれがかつての敵国で同じ目に遭う部分が描かれている。
戦争に関わる映画は普段あまり見ないが、人間が生きて行く上で体験する深い悲しみがよく描かれていてよかったと思う。主人公の役者さん達の演技が映画に奥行きを与えている。

フランス語は全然勉強しなかったのに何故フランス映画が好きかと言うと、そこで見られる文化の違いが面白いからなのだと思う。人々の考え方とか、また衣食住がしばしばお洒落で画面に映る物全てが興味深い。それにしても、彼らは何であんなに延々としゃべり続けるのだろうといつも思う。エリック・ロメール監督の映画特集の時も、登場人物はそれぞれの心の動きを言葉に表わしているが、筋がそれで動くわけでもないのだ。そのどうってことのなさがまた面白くて、何年に一度かやって来るロメール映画週間が始まったら、きっとまた見に行くのだと思う。オゾン監督もこの際見てみようかな、私の好きな女優さん、シャーロット・ランプリングの「スイミング・プール」は面白いらしい。興味はとりあえず映画だけで、いつか文学の領域に入って行くかもしれない。