大相撲の話題 執筆者:プレーイングマネージャー

 大相撲を外国人力士(特にモンゴル勢)が席巻するようになって久しいです。以前は北の湖や千代の富士、貴乃花といった大横綱が中心にいて、高見山、小錦、曙、武蔵丸らの個性的なハワイ勢が彩りを添えていましたが、貴乃花が2003年初場所で引退してから長らく日本人横綱が不在となり、横綱をモンゴル勢が独占するようになって、日本人横綱が待ち望まれていました。横綱候補の最右翼であった稀勢の里は大関の座を6年間守り続けるもここ一番に弱いと言われ続け、綱取りに挑むこと実に7回。そしてやっと2017年初場所後に横綱となり、日本中が大いに沸いたのはわずか1年半前のことです。そもそもその2017年初場所がはじまる前は、前の九州場所の成績が12勝3敗で準優勝でしたが優勝力士との星差が2つあり優勝に準じた成績というには異論もあり、綱取り場所の機運は高まっていませんでした。ただ、一度も幕内最高優勝を経験してないにも関わらず2016年の年間最多勝を受賞するなど成績が安定している点を評価され、初場所の千秋楽で白鵬に対してきっちり白星をあげ14勝1敗で優勝して、場所後に第72代横綱に推挙されました。
 新横綱として迎えた春場所13日目の日馬富士との取組での左胸、左肩の大怪我、その日からの2連敗を経て、照ノ富士に千秋楽、優勝決定戦と右手1本で2連勝して大逆転優勝をかざりました。しかし、この感動的な優勝のあとに、ここまで長期休場(今夏場所までで8場所連続休場。うち3場所は途中休場)が続くとは正直思いもしませんでした。31歳でようやく横綱になって、白鵬も全盛期を過ぎていることを考えると、少なくとも数年は黄金時代が続くと信じて疑いませんでした。これまでとても怪我が少なく、入門以来の15年間でたった一度しか休場していないほど丈夫な力士だったのに、あの大怪我で、もしかしたら力士生命も潰えてしまいそうになっている。怪我からもう1年以上もたつのにいまだに光明を見いだせずに苦しんでいる様子をみるのはとてもつらいものがあります。
 あの感動的な優勝の裏で、日馬富士に土俵下に突き飛ばされ左肩と左胸を強打した直後の稀勢の里の苦痛にゆがんだ顔が忘れられず、とても気になっていました。あまりにも痛かったのでしょう、そのまま倒れこんでしまいしばらく立ち上がれませんでした。傍目からみてもとても深刻な怪我に見えましたので、このまま休場してしまうのだろうと思いましたが、誰もが新横綱として優勝を願っているところにあって休場という選択肢はなかったのかも知れません。そしてこの稀勢の里の姿が、膝の大怪我をおして強行出場して感動的な優勝をしたものの結果的にそれが最後の優勝となってしまった貴乃花とどうしても重なります(2001年5月場所)。小泉純一郎元総理が「痛みに耐えてよく頑張った。感動した。おめでとう。」と言って表彰状を渡すシーンはとても印象的でしたので記憶に残っている方も多いでしょう。平成の大横綱貴乃花はこの次の場所から7場所連続で全休した後、ひと場所だけ皆勤し12勝3敗の成績を残したものの、結局程なくして引退してしまいました。
 野球やサッカーと異なり、相撲はシーズン、オフシーズンの区別がなく年6場所の他に地方巡業もあり、1年中ずっとシーズンなわけですから非常に過酷なスポーツだと思います。そのために、不完全なまま出場して怪我の治りを悪くしてしまう可能性はありますが、稀勢の里は今場所で3場所連続で全休していて、治る怪我でしたらもう治っているのではないかと思われます。ですがここまで怪我の影響が長引いていると、そもそももう治らない怪我(一説には左大胸筋断裂とも言われています)なのではないかと勘繰ってしまいます。一方、稽古量が足りておらず体重も増え明らかな調整不足だとか、身体は大丈夫だが相撲勘が戻っていないだけ、との報道もあります。
 もし、先代の師匠であった鳴門親方(元隆の里)がご存命だったら稀勢の里にどのような言葉をかけてあげるのでしょうか。先代が亡くなってからは、現師匠との力関係から(現師匠の現役時代の最高位が前頭止まりのため)誰も稀勢の里に意見できる人がいないと聞きます。横綱は背負っているものが大きいですので、進退も自分で決めなければなりません。このまま引退してしまうのはあまりにも惜しいですので、稀勢の里には全身全霊で立ち向かって、綱取り場所で見せたような盤石な相撲をぜひもう一度見せていただきたいと切に願っています。