植物のはなし 執筆者:Penny(翻訳ジム修了生)

 ここ4年住んでいる部屋には、1帖ほどのベランダがある。1/3はエアコンの室外機が占領しているので、実質は1平米ちょっとの小さなスペースには、友人に種をもらったソテツやフウセンカズラ、別の友人や実家から挿し木をわけてもらったカネノナルキやトラデスカンチア・ラベンダー、去年種を植えた30cmほどのリンゴの木や、セールコーナーで見つけたミニバラやハートカズラや、株分けで増え続けるハーブ類が、ひしめき合っている。もともと出不精なこともあり、家で仕事をしていると一歩も外に出ない日もある。そういう時、戸を開け放って植物を眺める。今の季節、晴れた日に来客があると、ベッドトレイをベランダに置いて、植物に向かってお茶にする。大きさは違っても、感覚としては縁側に座って庭を眺めているようなものだ。屋根もない丸見えのベランダに、夜はキャンドルを灯すので、ご近所さんからは、不気味に見えるかもしれないけれど、気にしないことにしている

 記憶にあるかぎり初めて自分のものとして手に入れた植物は、5cm足らずの小さなサボテンで、小学校中学年のころエーンジェルダ・アーディゾーニの『まいごになったおにんぎょう』やルーマー・ゴッデンの『人形の家』やスタジオジブリの『借りぐらしのアリエッティ』の原作にもなったメアリー・ノートンの『小人の冒険シリーズ』の影響で、ドールハウスに憧れて、少しずつ集めたミニチュア家具を本棚に並べ、モザイクタイルを敷いたり、トリムボーダーを
壁紙に見立てて貼ったりして作っていたドールハウスに置いていた。水をやりすぎないようにと聞いていたのに、我慢できずに腐らせてしまったのを覚えている。

 次が17歳のころ。母について入った花屋で、ソングオブジャマイカという観葉植物を見かけ、反対する母を説き伏せて買ってもらった。くねった幹のてっぺんに笹に似た葉がついた見た目が特に好きだったわけでもなく、ただ名前が気に入って手に入れてせいか、北向きの部屋で育ちが悪く見た目が変わらないのがつまらなくて飽きたのかは忘れたけれど、数ヶ月後、何かのはずみで枝を一本折ってしまった。人を骨折させてしまったような気持ちになっている私を尻目に、母はそれ見たことかとばかりに鉢と折れた枝を持って行ってしまった。そのまた数ヶ月後、リビングにはのびのびと成長して、2鉢に増えたソングオブジャマイカがあった。母が折れた枝を挿し木にしたのだ。それから実家を出るまでは、世話は母にまかせて、私は綺麗に咲いた花を拝借して、なぜか花が大好きだった飼い猫と一緒に眺める役にまわった。

 一人暮らしを始めた後も、いくどかハーブを枯らせたり多肉植物をダメにしたりを繰り返し、諦めかけていた数年前、友人がマザーリーフの葉を2枚持って家に来た。マザーリーフは、ハカラメとも呼ばれ、その名の通り葉から芽が出る不思議な植物だ。枯らせるのがいやで受け取れないと言ったけれど、ただ水につけておけばよいからと言われ、もらってしまった。口では仕方ないと言いつつも、内心ワクワクしながら待っていると、数週間で芽が出てきた。しばらくして土に植え替え、育った葉からまた芽が出て増えていき、去年の冬、大きくなりすぎて室内に入れられず、寒さに負けてしまった2鉢が減ってもまだ4鉢ある。そして気づけば、冒頭でも書いたように他の植物もずいぶん増えた。長期間家をあけられず面倒なこともあるし、出不精に拍車がかかっているのは植物のせいだと呆れられることもあるし、ゴキブリも平気で退治できる私ですら虫に悩まされることもある。だけど朝の水やりが、規則正しい生活を送るのにも一役買ってくれているし、何より純粋に楽しいので、スペースがゆるすかぎり増え続けるだろう。今もキッチンには、昨日食べたサクランボの種を水につけておいてある。