野球の話題~前回の続き 執筆者:プレーイングマネージャー

 まず、前回の稿を終えるにあたり、「ぜひ故障には気を付けてシーズンを通じて大活躍して欲しい」と書いた矢先に、つい先日大谷選手が右肘の故障(内側側副靭帯損傷)という投手生命を左右する大けがによる戦線離脱、最悪の場合靭帯再建手術が必要となる、という非常に悲しいニュースが伝えられました。
 靭帯再建手術は自分自身の患部以外、例えば手首などの腱を損傷、断裂した腱のかわりに移植する手術で、リハビリ期間を含めて復帰までに1年半から場合により2年を要するとされています。速球派投手が以前の球威を失い変化球主体の技巧派に転じることも珍しくなく、選手生命を左右する大手術です。最初にその手術を受けた選手の名前からトミージョン手術と言われています。当時はその術式の開発者であるフランク・ジョーブ博士に執刀してもらうために渡米する必要がありましたが、30年以上が経過した現在ではだいぶスポーツ医学も進歩し日本でも受けることができるようです。
 日本人でこの手術を受け、その後見事に復活を果たした選手には、年配の方には懐かしい名前かも知れませんが、村田兆治投手(元ロッテ)や桑田真澄投手(元巨人)、最近奇跡の復活を遂げオールスターファン投票中間発表でセ・リーグ先発投手部門で堂々の1位を記録した松坂大輔投手(現中日)などがおります。他にも、ダルビッシュ有投手(現シカゴ・カブス)や藤川球児投手(現阪神)などの著名選手もたくさん受けています。
 村田兆治投手が故障から復帰したのは私が一番よく野球を観ていた時期でした。当時の日本は肘にメスを入れることは選手生命の終わりと考えられていた時代でしたが、選手生命を懸けて渡米して見事復活し引退までの6年間で59勝も挙げ、通算215勝を記録された大投手でした。復帰後は中6日で日曜日ごとに登板したことから「サンデー兆治」と呼ばれていたことを懐かしく思い出しました。
 大谷投手の魅力は前回も書きましたがやはり剛速球だと思います。身長も193cmと大きく体格では一見他のメジャーの選手と引けを取らなくみえます。しかし上記手術後の回復過程もアメリカ人より日本人のほうがゆっくりで時間がかかると言われており、やはり躯幹の強さが違う可能性はあります。筋肉を鍛えて肥大させると腱もそれに合わせて多少は太くなっていくと言われているものの、やはり腱は鍛えるものではなく損傷しないようにいたわるものと考えられています。剛速球を投げ込むごとに肘の内側には強い牽引力が働くのですが、過去の論文によると一球投げるごとに内側側副靭帯には強度ギリギリの負荷が、場合によってはそれを超える負荷がかかっているのだそうです。実際には他の筋肉にも負荷が分散されるためすぐに断裂してしまうことはありませんが、激しい荷重がかかるのは明らかです。こうして考えると、投手は野球の中で最も華やかなポジションであると同時に、文字通り骨身を削って我々を魅了してくれているのだとつくづく実感します。といっても、野手よりも投手のほうが最高のパフォーマンスをみせられる期間すなわち旬が短いわりには給与水準が高いとも聞きませんし、非常に過酷なポジションと思います。野球界の至宝である大谷選手はぜひ焦らずに治療に専念していただきたいと思います。