昔を思い出して 執筆者:流浪の会計士

 みなさんは先月のゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか。
 私は、昔の会計関係の研究書や実務書の整理をしていました。人からもらったり、買ったりして集めた本で本棚が一杯になっていたのですが、その多くはこれから先読まないだろうから、この際思い切って整理して、少しでも身軽になろうと思ったのです。要らなくなった本は、会計研究者の役に立つかもしれないので、古本屋へ売りに出すつもりでした。というわけで、ゴソゴソ整理していると、英語で書かれた文献を見つけました。
 まず見つけたのは、デリバティブ取引(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)の会計処理に関する海外の文献のコピーでした。今から25年くらい前、日本の会計実務では、デリバティブ取引をどのように会計処理すべきかが重要なテーマの一つになっていました。そのころ大学院で会計学の勉強をしていた私は、デリバティブ取引の会計処理を研究テーマに選び、研究材料として、我が国の論文や書籍とともに海外の関連する会計基準やディスカッション・ペーパーなどの文献を収集したのです。指導教官からコピーを頂いたり、大学の図書館で探したりして集めたコピーの量は数百ページ分。定期的に当番が回ってくるゼミナールでの報告のために、夜遅くまで研究部屋で格闘しました。デリバティブ取引特有のテクニカルタームが出てくるので、一般の英和辞書だけでなく経済用語の英和辞書も手元に置いていた覚えがあります。
 次に見つけたのは、“The Nature of the Firm: Origins, Evolution, and Development”という本でした。ノーベル賞を受賞した経済学者Ronald H. Coaseが、1937年に著した論文“The Nature of the Firm”の中で、取引コストの概念を用いて企業の本質を明らかにしたのですが、この学説についてCoase本人を含む研究者たちが論じた論文集です。大学院へ進学することを大学4年の秋に決意したときに、大学院の先輩から「入学試験では英語が出るから、その準備のためにこれを読もう」と言われて購入し、その先輩と二人で読み進めたのでした。読んで分からないところは、二人でディスカッションしたのを覚えています。文の構造を理解するために入れたカッコやスラッシュ、大事だと思って引いたアンダーラインや余白のメモ書きが今もそのまま残っていました。後輩のことを気にかけてくれる兄貴分のような存在でした。その先輩は、今は大学で会計学の教授をしていますが、元気でいらっしゃるだろうか。
 昔の本を整理しながら、ひととき懐かしい思い出に浸ったのでした。