会計士ってどんなときに英語を使うの? 執筆者:流浪の会計士

 巷では英語の勉強法に関するノウハウ本や特集記事が溢れており、多くの人(私も含めて)が英語力の向上に関心を持っていることが分かります。仕事や旅行など英語を使う場面はさまざまですが、今回は会計士が仕事の中で英語を使うシーンについて、自分の経験などを踏まえて一例を紹介します。
 その前に、我が国の開示・監査制度について簡単に説明します。証券取引所に株式を上場している会社(上場会社)は、会計年度が終了すると3か月以内に有価証券報告書という書類を金融庁に提出することが義務付けられています。有価証券報告書には、例えば、会社が営む事業の内容、業績の説明、財務情報など、その会社に興味がある投資家に役立つ情報が含まれており、EDINETという電子開示システムから検索して見ることができます。この中の財務情報のセクションには連結財務諸表(Consolidated Financial Statements)が掲載されます。連結財務諸表は、親会社と子会社の財務諸表を合算することによって作成される財務書類であり、これを見れば、会社グループ全体の業績や財政状態が数字で分かります(なお、親会社や子会社それぞれの財務書類は「財務諸表(Financial Statements)」と呼ばれます。)。財務情報のセクションに掲載される連結財務諸表は、その前に公認会計士又は監査法人(以下では両者をまとめて「監査人」といいます。)の監査を受けることが求められています。
 では、監査人はどうやって連結財務諸表を監査するかというと、連結財務諸表を構成する要素、すなわち個々の会社の財務諸表を監査していきます。その際、親会社の財務諸表は監査人自らが監査しますが、子会社の財務諸表については別の会計士に監査を頼むこともあります。特に海外に子会社がある場合、現地の法律や商慣習、あるいは会計実務は日本と異なるので、これらを十分に理解している現地の会計士に監査を頼むのが一般的です。通常は、監査人が依頼事項を監査指示書(Audit Instruction)としてまとめ、これを現地の会計士に送ります。監査指示書に記載される事柄としては、例えば、その子会社の監査を行うに当たって注意する点、監査した結果について報告してほしい内容と報告の様式、報告期限などがあります。現地の会計士は、監査指示書に基づいて監査を行い、その結果を報告します。監査人は、その内容を読んで子会社の財務諸表に問題があるかどうかを判断し、必要があれば、現地の会計士に対して、報告内容についてさらに詳しい説明を求めたり、追加作業を依頼したりします。こうしたコミュニケーションは電子メールや電話で行いますが、時には、監査人が現地へ飛んで、現地の会計士に直接会うこともあります。
 このように海外に子会社がある上場会社の監査を行う場合は、英語を読み書きし、聞いて話す力が求められます。もちろん世界中の会計士に共通の専門用語はありますが、実際の監査は、監査先の会社の状況を見ながら行うので、監査人と現地の会計士との間のコミュニケーションにおいても臨機応変に対処することが必要になります。
 私が会計士になった20数年前のころと比べると、経済のグローバル化によって、我が国の会社もより広く海外に事業展開するようになり、その結果、監査する側にも、会計や監査の能力と並んで英語力がますます求められるようになりました。私の所属する監査法人でも、英語のスキルアップが奨励されており、人事評価では英語の能力も考慮されています。また、人事担当者の話によれば、海外の会計事務所への派遣を募集すると、いつも定員を超える応募があるそうです。おかげで自分の周りにも英語に堪能な人が増えました。まさに経済のグローバル化による影響が会計士の世界にも及んでいるといえるでしょう。
 最後は、会計士にも英語力が求められているという話になりましたが、もちろん、英語をあまり使わない業務に就いている会計士も監査法人内にはたくさんいますし、ましてや我が国の会計士みんなが英語を必要としているわけでもありません。今回の話は、あくまでも会計士と英語とのかかわりについての参考として読んでもらえればと思います。