10年に一度じゃ間に合わない!? 英語の辞書に新語が追加されるとき! 執筆者:雀寸(プータロー)

ちゃらい、小悪魔、自撮りと来て、ディープラーニングと…。来年2018年の年初、広辞苑の改訂第7版が発売されるそうですね。わが国に国語辞典は数あれど、やはり広辞苑は格別のようで、上に挙げたような新掲載の語彙がテレビでも話題になっておりました。前の第6版が出たのは、10年前の2008年ですが、新板では、そこから新たに1万項目が追加がされたんだそうで。とするとですよ、毎年1000個の新しい言葉が増えていることになるじゃないですか! 毎日にしたら3個っすよ!! しかもこれ、あくまで広辞苑に採用される程度には、世間でも知られているような言葉ですもんね。世の中、日々いろんなことが起こって、言葉もますます増え続けている様子であります。

さて。英語の世界では、辞書というもは今やオンライン版が正本で、印刷されたヴァージョンは副次的な位置付けに変りつつあるように思われます。ですので、それらの新語の追加は、10年に1度どさっと大量に追加されるという訳ではなくて、より頻繁になってます。英米の両巨頭、Oxford English Dictionary (OED)Merriam-Websterでは、年に数回、不定期に新語をまとめて辞書に追加します。その際、新たに追加された中から、際立った単語をいくらかピックアップして紹介する記事がサイトに掲載されるんですよね。

まずはOEDですが、こちらは今年9月1000語の語彙を追加したとのことです(New words notes September 2017)。OEDは追加した単語の一覧も掲載しているのが親切ですね。以下、新しい語彙の一例ですが…

  • fatberg —— 名詞。下水管の中で固形化した脂の大きな塊とのこと。日本語では、固着油脂と呼ばれているようです。
  • exoplanet —— 名詞。太陽系外惑星ですね。NASAのケプラー探査機によって、飛躍的に調査が進んだんだそうで。
  • worstest —— 形容詞・名詞。badの最上級worstをさらに最上級にした言葉ですね。最悪中の最悪(笑)。とはいえ、OEDが確認した最古の用例は1768年だというから、ポッと出の流行語ではありませんな。worstestの反対、bestestは既に収録済み。

Merriam-Websterは、OEDに比べて、若干庶民的かつアメリカ的なバックグラウンドが感じられる編集方針になっているように思います。ボクはこっちほうが好きなんですよね。新掲載語彙の記事も毎回文章が練られていて面白いんです。250語超が今年9月に追加されました(New Dictionary Words|Sep 2017)。Internet of Thingsとか、ransomware、malware、long-term / short-term memoryといった、IT関連で頻繁に見られる単語が今回新掲載になっているというのは意外ですね。編集方針が保守的なんですかね。他、新しい語彙の一例ですが…

  • hive mind —— 集合意識とか集合精神とかそういうやつ(笑)。かつてはSF用語だったように思うんですが、インターネットを背景に、この言葉、リアリティが出てきているんでしょうね。
  • onboarding —— 名詞。みんな大好き「英辞郎」では、“新人研修”という訳語を当てております。でも、それよりもうちょい広い概念でしょう。顧客に対して新しい商品に親しんでもらうプロセスや、データをデジタル化するプロセスも指すようです。人なりデータなりを新しい局面に配置した際のプロセスってことなんでしょうね。社会学方面の学者が良い訳語を付けてくれると良いのですが(笑)。
  • alt-right —— 名詞。Merriam-Websterの語釈を直訳してみます。「オンラインを中心にした米国における右翼運動もしくは集団形成。その支持者は、保守政治の主潮を拒絶し、白人ナショナリズムの理念においては概して中心的な、過激主義的信条および政策を信奉する。」 まあ予想通りの語釈かな。ははは(笑)。

一方、Cambridgeは、ちょっと趣向が異なっていまして、New wordsという週イチ更新のブログがあるのですが、そこで紹介された新語をCambridgeの辞書に採用するか否か、読者が投票できるようになってるんですよ。「掲載すべし」「すべからず」「様子見」のいずれかを選択できます。投票の結果が果たしてどうなるのか、それがいまひとつ分からんのですが、試みとしては面白い。このブログをつらつら見ていくとほとんどの新語は「様子見」か「掲載すべからず」と思われているようですが、“mixed reality”や“experience economy”といった言葉は、「掲載すべし」が投票の比較多数になってました。実際、後者の「経験経済」はCambridgeの辞書に掲載済みです。

…と、いうことで、なんでしょう、日本語の辞書も、インターネット版に編集の軸足を置くところ、そろそろ出ても良さそうですよね。結局辞書ってデータベースですから、コンピュータが最高にお得意な仕事ですし、工夫次第で多彩なサービスができるはず。もちろん、OED、Merriam-Webster、Cambridgeの辞書がこの先どう進化していくのかも興味深いところですが、よくよく考えるとこのあたりも結局Google先生が全部やっちゃうのかなあ…。Google先生のところのhive mindは、そのあたりどうご賢慮なさっておるのか、折に触れて「OK、Google!」って聞いてみるしかないね!

 

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