字幕翻訳  龍宮小僧 (日英翻訳者)

以前にも少し触れましたが、字幕翻訳については、一般的にあまり詳しいことは知られていないようですので、今回はより突っ込んでお話ししたいと思います。
ここで言う、字幕翻訳というのは、劇場映画、なかでも洋画ですね。そして、テレビで放映される、海外ドラマ、海外ドキュメンタリー、それに洋画、海外ドラマ、海外ドキュメンタリーのDVDなどで使われている字幕の翻訳のことです。一方で、よく、ニュースやバラエティなどのテレビ番組で出演者のしゃべりに合わせてその内容を表示するテロップは字幕とは異なります。

字幕の通常の作り方としては、まず、素材の全編を見てから、出演者がしゃべっている長さ(尺といいます)をストップウォッチで計って、秒数によって字幕の文字数を決めます。1秒間に4文字とカウントするので、尺が3秒なら、12文字です。当然、きっちり2秒にならず、2.45秒などになることもしばしば。これをハコ切りといいますが、この通り、とても細かい作業です。また、日本語の字幕は、2行と決まっていて、1行の文字数は横の場合、12~15文字と、劇場映画、テレビ、DVD等によって違います。2時間の映画で、字幕の数は時によっては1000枚にも上ります。
以前は、このようにアナログで、ストップウォッチを用いて計っていましたが、今では便利な字幕ソフトが浸透しています。字幕ソフトではストップウォッチを使わなくても画面上でハコ切りが簡単にできるようになったので、ハコ切りの精度は高くなったはずです。ストップウォッチだと、手動なのでどうしてもずれてしまいます。ということで、今や、字幕ソフトを使いこなせなければ、仕事は回ってきません。
それ以外にも、放送禁止用語、送り仮名、漢字の使用法などたくさんのルールがあって、専門学校等できちんと学ぶ必要があります。NHKと朝日新聞社の用字用語辞典は必携でした。
また、特にドキュメンタリー作品などでは、作品中にでてくるすべての事実の裏を取らなければならず、はっきと決まった形式はありませんでしたが、「申し送り」として、項目と出典を一覧表にして依頼主のエージェントに翻訳と一緒に提出が求められました。現在では、インターネットという便利なツールがあって、裏取りの作業も効率化されましたが、昔は図書館へ行くしかなく、調べものに非常に時間がかかったようです。その代わり、昨今は納期も短くなり、翻訳者にとっては厳しくなってきました。まだまだ、テクニカルな部分で、緻密な作業がありますが、ここでは省きます。
私も最初はちょっとした好奇心でやってみようかな、と思って始めましたが、想像以上に大変でした。ここまで細かい作業があると事前に知っていたら、関わっていなかったかもしれません。でも、お陰で訳文を短くまとめるというスキルがかなり磨かれました。それに、苦労した分、映像作品としてうまくできたと思えたときに字幕翻訳の醍醐味があるといえます。

 

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