こころとからだ、そしてことば  執筆者:綾 仁美(アプリシエイタ-)

もう1月も終わりに近づいているのかと思うと驚いてしまいますが、皆さま年始はどのように過ごされたでしょうか。きっとそれぞれに今年の目標ややりたいことがあると思います。私は「今やっている翻訳が完成して本になったら、大切な人に届けに行く」ことが第一なのですが、同時に「心について深く知りたいなあ」と思いました。

というのも、昨年1年の翻訳作業を通じて、一定のペースを保って翻訳をするために心の浮き沈みをコントロールする大切さと、その難しさを感じたからです。
どうしても思った通りに進まなくて落ち込んでしまったり、どうしても翻訳作業に手をつけられなかったりするのは、私の翻訳技術の問題もあるでしょうし、「メンタルが弱い」と言われればその通りなのですが、そもそも「メンタルが弱い」とはどのような状態なのか知りたくなったのです。心と身体はつながっているとも聞くので、自分の心とうまく付き合うヒントを見つけられるかもと思い、こんな本を読み始めました。

ジェシー・プリンツ著、源河亨訳、『はらわたが煮えくりかえる 情動の身体知覚説』勁草書房、2016年。

感情(情動)は身体反応を知覚した結果湧き上がるという立場から、心と身体の関係について論じています。
原題は“Gut Reactions : A Perceptual Theory of Emotion”なので、副題を踏まえて直訳すると、『内臓の身体反応』になるのかもしれませんが、絶妙なタイトルに拍手です。
柴田先生がよく仰っているように、面白そう!と思ってもらえるようなインパクトは大事だと感じました。身体内部の構造について、昔の人は今ほど詳細な情報を得られなかったと思いますが、身体の内側の感覚をこれほどうまく表現するなんて、言語感覚の鋭さに驚きます。

帯の紹介文に「心理学・脳科学の成果に立脚した感情の哲学の最重要著作」とある通り、多分野の専門知識が詰め込まれているので、読むのも理解するのもゆっくりですが、知識が自分の身体に染み込んでゆくのが楽しみです。
こうして自分の心や身体とうまく付き合いつつ、そこから生まれる言葉と向き合いたいと思いますので、本年もよろしくお願い致します。

 

柴田耕太郎「英文教室」HPはこちら