誰も知らない、けれど共感できる世界のことわざ  執筆者:綾 仁美(アプリシエイタ-)

「逃げるは恥だが役に立つ」といえば、先週のリレーエッセイの中でも取り上げられた話題のドラマのタイトルですが、元々はハンガリーのことわざだそうです。知らないだけで世界には色々なことわざがあるのだなあ、と思っていた時、タイミングよく『誰も知らない世界のことわざ』(エラ・フランシス・サンダース著、前田まゆみ訳)という本と巡り会ったので、読んでみました。

「ザワークラウトの中で自転車をこぐ(フランス語)」、「神の祝福がありますように。そしてあなたの口ひげが ふさふさの柴のようにのびますように(モンゴル語)」、「彼の鼻は、雲をつきやぶっている(セルビア語)」などなど。奇想天外で時に詩的な表現の中に、その国や言語独特の文化が垣間見えてとても面白いです。
「もうお手上げ」という意味のフランス語のことわざは、ツール・ド・フランス(有名な自転車レース)で脱落者を収容する車の中に、ザワークラウトの広告があったことが由来だったり、モンゴル語のことわざには、モンゴルの人々が理想とする口ひげが表されていたり。

一方で、意味はその国や言語独特というより、どこか他の言語のことわざと似ていたり、広く共感できるものが多いと感じました。
例えば、上でご紹介したモンゴル語のことわざは、英語の“Bless you!”と同じように、くしゃみをした人への祈りの言葉です。セルビア語のことわざは、日本語で言うなら、「彼は天狗になっている」ですね。それぞれ異なる文化や風習の中で、見える景色や描写の仕方は違っていても、感じることや伝えたい思いは共通なのかなと嬉しくなります。皆さんも、独特で豊かな表現と、深い共感が広がることわざの世界を楽しんでみて下さい。

最後に。翻訳にも日々の生活にも当てはまると感じた、美しいことわざをご紹介します。

「一滴一滴が、いつしか湖をつくる(ブルガリア語)」

来たる年も、皆さんが積み重ねる一滴一滴が、湖という大きな実りにつながりますように。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。

 

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