来年の夢 執筆者:城野卯響子(翻訳校正者)

師走の月も半ばを過ぎ、「今年もあとわずか」と、いろいろな締め切り・カウントダウンに焦る時期がやってきました。一度でいいから「あら、まだ年末まで二週間もあるのね」と余裕をもってこの時期を迎えてみたいものです…が。さて、それはともかく今月も、訳した言葉のお掃除人「翻訳落ち葉掃き」こと、城野卯 響子がリレーエッセイの第三週を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

このひと月、ピコ太郎氏演じる「PPAP」、水曜深夜の本格フィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」、そして星野 源氏の“恋ダンス”がブームとなった火曜夜のTVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などをミーハーに楽しみながら過ごしておりました。そんな中で興味深く感じたのは、インターネットが生活の中にすっかり浸透しており、日本のテレビやアニメなどのコンテンツがネットを通じて、あまり時間差なく海外で視聴され、受け入れられ、それをもとに海外でも視聴者が個人的に「PPAP」のパロディを作ったり、「ユーリ!!! on ICE」や「逃げ恥(「逃げるは恥だが役に立つ」の略)を視聴した感想動画をYouTubeやInstagramにアップロードしたり、あるいはtwitter上でそれぞれの言語で想いをつぶやいて「いいね!」を押したりシェアしたりしている、つまりサブカルチャーを通じて日本と世界が簡単に、グローバルに《つながっている》という状況でした。私の幼少時、昭和の世には想像すらできなかった「国際化」です。その頃でもエアメールでの文通という楽しみはありましたが、名前も知らない他国の人と瞬時に繋がり想いを共有できるとは、なんと素晴らしき世界なのでしょうか。

もちろんアニメやドラマの海外での視聴については、著作権を無視して個人が字幕をつけてネットで公開するいわゆる「海賊版」も多く問題となっています(TV放映の数時間後にはもう字幕をつけた動画を動画投稿サイトにアップロードできる能力をもつ「字幕組」という組織…しかも無報酬のボランティアの…が存在しているほどです)が、こうした無法状態に対処すべく、公式の契約を結び、以前では考えられないほど迅速に正規版の字幕版/吹き替え版を作成・公開しているサイト(CrunchyrollやFunimationなど)も作られています。こうした流れを観ていると、「見たい」「知りたい」「楽しみたい」という気持ちの強さが「翻訳」を進める原動力なんだなあ、と改めて感じます。

そしてまた「知って欲しい」も翻訳の原動力のひとつ。来日観光客数の増加に対応すべく、今月20日からメガホン型多言語音声翻訳サービス「メガホンヤク」がパナソニック株式会社から発売予定とのこと。メガホン型の「メガホンヤク」に向かって喋ると、それが日・英・中・韓の4カ国語に翻訳されて拡声器から出力される…まるで漫画「ドラえもん」に出てくるひみつ道具が現実のものとなったかのような製品です。ここでもまた、IT技術の発達が後押しとなって新しい形での「知って欲しい」方向の翻訳が実現したことを嬉しく思います。

さて、来年はどんな翻訳の「夢」が叶うのでしょうか。個人的には「視た文章がそのまま翻訳されるメガネ」「聞いた声が翻訳される超小型補聴器」の発売を期待しています。そしてみなさまの来年の翻訳の「夢」は何でしょうか?

今回も最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

 

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