椅子のことなど 執筆者:工学博士 寅吉

 年を取ると何かと下世話な用事が増えるもので最近は些か不本意な日々を送っています。翻訳の案件もキャンセルせざるを得ない有様で虚しい限りです。落ち着いて翻訳の仕事に取り組める幸せ、また翻訳の勉強に打ち込める幸せをつくづく感じ入る此の頃です。そんなわけで今回はいつにもまして取り留めない雑文と相成りますが平にご容赦願います。

 翻訳の仕事イコールパソコン作業の時代なので私も御多分に漏れず職業病(腰痛、肩こり、疲れ目、腱鞘炎)に悩まされています(特に腱鞘炎がひどい)。これについては椅子の選択が大変重要で、先日の月例翻訳研究会でも井口耕二さんが椅子のことに言及されていました。井口さんによると腰への負担を軽減するためには椅子は少し前傾気味がよいとのことでした。基本的にはそうなのでしょうが適性という面では個人差があるように思われます。私も前傾気味の椅子を使ったことがありますが何処か落ち着かず疲れる感じでした。井口さんはかつてフィギュアスケートの選手で現在はサイクリングをやられておられるので元々足腰はお強いでしょう。足も長く見るからにスポーツマン体形の方です。そういう方と私のような貧弱な体形の人間とでは適合する椅子も違ってくると思います。
 以前に家内が「椅子だけはケチらずにちゃんとしたものを使った方がよい」と言って外国製の上等の椅子を購入してくれました。座り心地が良くて気に入っていたのですがある時から我が家の長老猫に取られてしまいました。この椅子で寝るのがすっかり気に入った様子でテコでも動かない。察知能力に優れていて私が座ろうと思って椅子に近付いていくと何処にいても必ずすっ飛んでくる。私も思わず早足になる。文字通り取り合いです。大抵の場合タッチの差で向うが飛び乗りますが偶に私が勝つこともある。そんなときは鳴き喚いて暴れ足に噛みついてきます。仕方なく結局譲ることになる。そんな状態がしばらく続きました。
 椅子と言えば大学時代の粗末な椅子が思い出されます。私に言わせればあれは椅子と言える代物ではない。背もたれも何もない、やたら幅の狭い脚付きの台に過ぎない。大して長くもないその台に3~4人がギューギュー詰めて座らされる。前後の机の間隔も狭くて窮屈なことこの上ない。元来私は授業中に椅子の背にもたれてぼうっとしているのが好きだったのですがそんなことは一切できない。想像するだけでうんざりした気分になりました。私が次第に教室に足が向かなくなったのは偏にあの椅子のせいだと思っています。まあ当時はマンモス私学などという言葉があった位でともかく狭い敷地内に学生が溢れかえっていました。多分今は改善されているでしょう。何せベビーブームとか団塊の世代とかいう言葉で形容されていた時代のことで教育環境は常に劣悪でした。最近妙にノスタルジックに昭和を懐かしむ風潮が一部にあるようですが私は決してそんな風には思いません。いろいろな面で現在の方が遥かによい時代だと思います。
 話を戻しまして、翻訳においても健康が最優先であるのは勿論ですが気をつけないとつい運動不足になりがちです。土屋政雄さんは健康のために水泳をやっていると話されていました。私も最低限の運動として散歩と体操を日課にしています。体操をやるときはストレッチだけでなく腹筋や腕立て伏せなどのある程度筋肉をきゅっと動かす運動も併せてやるようにしています。散歩は頭のリセットにも大変適していて、翻訳で煮詰まったときなど一旦パソコンを離れて散歩をするとスーっと解が浮かんでくることがよくあります。因みに井口耕二さんは夜早め(九時半頃)に寝て朝早く(四時頃)起きて仕事をすると言っておられました。生活パターンとして夜型よりもベターでしょう。土屋さんも井口さんも健康管理をしっかりされているなと感じた次第です。
 飲み物も重要なアイテムです。コーヒーや紅茶はリフレッシュに適していますが飲みすぎると胃腸によくない。特に夜遅くまで仕事をするときには気をつけた方がよいです。そんな時にお奨めしたいのはハーブコーディアルです。健康的で下手なドリンク剤よりも余程元気が出ます。買うと結構高いですが自分で比較的簡単に作ることができます。自分で作ればお好みでハーブの種類が選べるし甘さも調整できます。私が好きなのはハイビスカスとローズヒップをベースにしたマイルドな味わいのもので色合いもきれいです。カモミールを加えれば胃を守る薬効があります。かつては私も夜遅くまで仕事をすることが多かったのですが、その頃はよく娘が作ってくれました。一度お試しください。

 また話が変わりますが、先日、マウスに入れていた電池が漏液してそのマウスはダメになってしまいました。息子が誕生祝にくれたものだったので少々がっかりしました。アルカリ電池の電解液は元々漏液しやすい性質があるのですが国産品は対策技術がほぼ確立されているでしょう。一方で外国製は未だ不安があると思われます。使用しないときには電池を機器から外しておくのがベストですがそれが難しい場合は少々高くても国産品を使うのが無難と思います。アルカリ電解液は劇薬で腐食性が高いので漏液したらまず間違いなく機器は壊れます。
 そもそも所謂マンガン乾電池が世の中から消え失せて全てアルカリ電池になってしまったことが解せない話です。アルカリ電池は確かに容量が高くて重負荷特性(大電流放電)に優れていますが、例えば懐中電灯のようなものまでこれを使う必要があるか疑問です。むしろ寿命が来ると急激に立ち下がってしまうアルカリ電池よりも緩やかに減衰するマンガン乾電池の方がそれらの用途には適していると思います。メーカー側の都合としか思えないですがまあどうしようもない。せいぜい漏液にはご用心ください。

 

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