決まりごと2 執筆者:片山由美子(弁護士)

先月に引き続き、法律分野の用語の決まりごとを1つだけ述べたいと思います。法律分野自体に興味がない方も多いとは思いますが、分野により、日常とは異なる言葉の使い方の規則があることを感じていただけたら幸いです。

~「時」、「とき」、「場合」の使い方の規則~

①「とき」と「場合」は、仮定条件を表します。「とき」(ひらがな表記)は必ずしも時間的概念を含んでいません。「場合」と似たニュアンスです。「とき」と「場合」は、語感や語呂で使い分けられます。
(例)個人情報保護法
第十六条 
-途中略-
 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 法令に基づく場合
第二十七条
 個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

②ただし、「とき」と「場合」を使い分けなければならないときもあります。
条件が2つ重なっている場合は、大きな条件には「場合」を使い、その条件をさらに制限するのに「とき」を使います。
(例)個人情報保護法
第三十四条
主務大臣は、個人情報取扱事業者が第十六条から第十八条まで、第二十条から第二十七条まで又は第三十条第二項の規定に違反した場合において個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。

勧告の条件は、まずは「違反した『場合』」であると大きな条件を示しています。そして、その条件に、「保護するために必要があると認める『とき』は」という絞りをかけています。違反していても保護の必要がないときは勧告できないということです。

先月も記載したように、このあたりの用語は「記号」なので、規則に従って使わなければ共通の理解からはみ出してしまします。翻訳の際に、原文が二重に条件を設定していれば、原文が2つの条件を両方「If」や「where」等で記載していたとしても、「場合」と「とき」を使い分けて訳さなければなりません。

③漢字の「時」は、「とき」と異なり時間的概念を表します。
(例)子ども・子育て支援法
第四十三条
-途中略-
前項ただし書の規定により同項本文の規定が適用されない場合であって、第一項の申請に係る地域型保育事業所(所在地市町村長の管轄する区域にあるものに限る。)について、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める時に、当該申請者について、被申請市町村長による第二十九条第一項の確認があったものとみなす。
一 所在地市町村長が第二十九条第一項の確認をしたとき 当該確認がされた

これは「確認された時点」という意味で、時間的な一点をとらえています。この「時」を「とき」と表記すると、内容が把握できなくなります。「『確認したときは』は『確認された時』」と表記することにより、「確認した場合は確認された時点で」という共通の理解が得られます。
ただ、そうであるならば、最初から「確認した場合は確認された時点で」と表記すればいいようにも思いますが、そこが法律用語のややこしいところです。

参照:「条文の読み方」法制執務用語研究会 有斐閣

 

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