「句動詞を使いこなす」  執筆者:国際機関広報担当

プロの翻訳者から数年前、「動詞+前置/副詞の句動詞のボキャブラリーを増やすことで、基礎英語力はぐんとアップする」というアドバイスを受けたこがある。そのアドバイスは実に的を得たものと頷ける。同じ動詞でも後続の前置詞や副詞によって意味が大きく変わることが多々あるからだ。以後、私自身も句動詞には細心の注意を払うようにしている。

Walkとgoで句動詞の例を見てみよう。Walkのごく一般的に知られる訳は自動詞の「歩く」だろう。ところが、walk+out となると、「ストライキに入る」、walk+overは「(人)に対してしたい放題のことをする」、walk+through は「順を追って説明する」「立ち稽古をさせる」など後続の副詞や前置詞によって意味が変わる。Goは、自動詞の「行く」が代表的な訳語だが、go+alongで「~に賛同する、支持する」、go+byで「~を順守する、~を判断基準にするgo+aboutで「~に臨む、~に取り組む」というようにやはり変化する。

句動詞は日常目に、耳にする英語の中でも頻繁に現れ、先日、英字新聞でふと目に留まったのが、beef up the missile defense という一文。前後の文章からなんとなくの意味は推測できたが、一般に使われるbeef(名詞では牛、動詞では(牛を)太らせる、不平を言う)の意味とは異なるように感じたので辞書を引いてみたところ「ミサイル防衛を強化する」という訳にいきついた。

動詞の意味が後続の前置詞や副詞によって変わるのはやっかいなようにも感じるが、逆の見方をすれば、一般的に多義な動詞が、後続に来るもので意味を確定、限定できる、とポジティブに受けとめることもできる。また、突然頼まれた通訳等、辞書を引く間もない業務の際に、句動詞のボキャブラリーがあると助けられることも多い。

仕事や家庭での役割に追われる社会人にとって、辞書や参考書を手に暗記というのは、時間的にも、気持ちの上でも難しいかもしれない。だが、英字新聞や英語ニュース、英語ネイティブの方との会話などの際に句動詞が使われてたら注意を払い、事例ごとにボキャブラリーを増やしていくのは良い方法だろう。英語の世界が楽しく広がっていくのではないだろうか。

参考文献:動詞を使いこなすための英和活用辞典(朝日出版社)、三省堂英語イディオム・句動詞大辞典(三省堂)

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